2001.11.01

【日本公衆衛生学会速報】 在宅患者の機能回復、介護職員の身体的負荷などの問題点を指摘

 帝京大学衛生学公衆衛生学教室の田宮菜奈子氏は10月31日、「医療と福祉の連携における研究・教育・実践−21世紀高齢社会における公衆衛生学の役割−」という演題で、学会の奨励賞受賞者講演を行った。これまでの自身の研究成果を紹介しつつ、医療を生活と調和したものとするために必要な福祉との連携において、公衆衛生学が果たし得る役割という観点から、退院後の在宅での機能回復の実態、介護保険サービスへの評価、介護職員の健康管理などの問題を取り上げた。

 田宮氏は、退院後の実態分析について初めに紹介。脳血管障害で入院した患者が自宅に退院するためには、本人のADLや年齢よりも、介護者の状況が大きく左右し、具体的には意欲、仕事の有無、経済的余裕が決定因子だと述べた。また、脳血管障害患者が在宅でADLを改善するための条件を調査。ADL上昇群と維持・低下群を比較したところ、浴室改造が要因になっており、患者の年齢や在宅ケア開始時のADLなどを含めて検討しても有意だったという。

 在宅脳血管障害患者の機能回復訓練への参加を妨げている原因を調べると、ADLの低い女性の参加率が悪いことが判明。なかでも、家族の付き添いがないことケースと、事業者による自宅までの送迎がないケース(いわゆるバス停方式の送迎など)に多く、女性の高齢者単独世帯は男性の5倍もあることなどが影響しているとし、「女性の参加率を高めるには、送迎方式の工夫や付き添いの確保などが課題」と、田宮氏は語った。

 また、訪問介護(ホームヘルプ)利用頻度の要因を分析した結果、高頻度の因子として、介護者が妻、反対に低頻度の因子として、嫁が姑を介護、息子が母を介護など、家族絡みの要因がいくつも浮かび上がってきたという。同氏は、「ニーズに対応できていない可能性もあり、今後検討が必要だ」との認識を示した。

 介護に携わる職員の健康問題に関しても報告。介護職員の腰への負担を取り上げ、車いす利用者を車に移乗させる際の負荷をリフト付きの改造車と非改造車で比較。介護者自身の主観的な負担感や対人介護時の腰椎への負担は有意に改造車の方が少なかったが、車いすの固定動作を含めての負荷量でみると差がなかったと説明した。介護サービスの需要の増加に伴い、こうした介護職員への身体的負荷について早急に対策を講じる必要がありそうだ。

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