2001.10.30

【日本高血圧学会速報】 ACE阻害薬 対 A2受容体拮抗薬、エビデンス不足で決着はつけられず

 レニン−アンジオテンシン系を抑制する降圧薬として、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬は同系列の薬剤とみなされることが多い。日本の高血圧治療ガイドラインであるJSH2000でも、A2受容体拮抗薬の適応は、「ACE阻害薬と同様、特に咳でACE阻害薬が使用できない患者」と記されており、咳の有無で使い分ける同グループの降圧薬との印象を抱かせる可能性がある。

 教育セッション2「DEBATE:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2000年版−その評価と問題点」(関連トピックス参照)の二つ目の議題では、ACE阻害薬とA2受容体拮抗薬を取り上げ、どちらの薬剤を用いるべきなのかについて議論が交わされた。

 札幌医科大学第二内科の島本和明氏がACE阻害薬の立場から、一方、獨協医科大学循環器内科の松岡博昭氏がA2受容体拮抗薬の立場から、降圧剤としてのメリットを中心に意見をそれぞれ述べあった。

空咳がなければACE阻害薬を処方すべき

 島本氏はエビデンスの相違をまず取り上げた。ACE阻害薬は欧米諸国や日本で約20年の使用歴があるものの、CAPPP(Captopril Prevention Project)やHOPE(Heart Outcomes Prevention Evaluation)など臨床試験の多くはここ数年間で発表されたもので、エビデンスの集積には時間がかかると強調し、販売期間が短いA2受容体拮抗薬にエビデンスがあまりそろっていないと指摘。また、日本だけでなく海外のガイドラインにおいても、A2受容体拮抗薬はACE阻害薬が認容できない場合といった前置きが付いている。同氏は、「そうした条件は、A2受容体拮抗薬のエビデンスが蓄積されていないことの現れ。逆に、ACE阻害薬の有用性は各種のデータで示されている」と述べた。

 ACE阻害薬(カプトプリル)とA2受容体拮抗薬(ロサルタン)を比較した臨床試験はほとんどないが、その中でELITE2(Evaluation of Losartan in the Elderly Study 2)のデータを紹介。全死亡リスクをみると二つの薬剤に有意差はないものの、β遮断薬の併用などの条件下で比較すると、ACE阻害薬が有意に優れていると指摘。「こうした事実は、ACE阻害薬の方が有用だとの可能性を示唆している」と島本氏は説明した。

 同氏は、「少なくとも現時点では、空咳などの副作用がなければACE阻害薬を第一選択薬に位置付け、副作用が認められた場合だけ、A2受容体拮抗薬に切り替えるという方針で問題ないだろう」との結論を示した。

A2受容体拮抗薬はコンプライアンスに優れ、治療継続率が高い

 A2受容体拮抗薬の弱みの一つは、比較的新しい薬剤ゆえエビデンスが少ないこと。松岡氏も、先に紹介した島本氏と同じくELITE2のデータを紹介し、「一次エンドポイント(全死亡)でみると、ACE阻害薬と差は確かにほとんどない。しかし、重要なことは患者が継続的に治療できるかどうかだ。(空咳などの)副作用により治療を継続できなかった患者も含めて、治療効果を判断しなければならない」と主張した。

 日本から症例登録がされたRENAAL(Reduction of Endpoints in NIDDM with Angiotensin2 Antagonist Losartan) のデータにも触れ、ロサルタンはプラセボ薬より末期腎不全や心不全などを有意に減少させたと報告。このほかにも複数の臨床試験結果を紹介し、松岡氏は、「エビデンスが集まってきている」と述べた。

 一方、A2受容体拮抗薬の強みは副作用が少ないこと。松岡氏は、「降圧薬の第一選択薬の中でも副作用の発生頻度が低い。長期的な血圧管理が重要であることを踏まえると、副作用の頻度は臨床上、非常に大きな意味を持つはずだ」と繰り返し述べ、A2受容体拮抗薬の利点を強調した。

 なお、薬剤の効果については、「心臓に対する保護作用はACE阻害薬ほどエビデンスはまだないが、降圧や腎臓に対する保護作用は、両薬はほぼ同等であると考えてよい」と松岡氏は述べ、これには島本氏も基本的に同意していた。

 最後に、この議論の座長を務めた札幌医科大学名誉教授の飯村功氏は、「A2受容体拮抗薬のエビデンス不足はやはり否めず、それらが蓄積されるまで結論は先送りにしたい」と語り、降圧剤としての優劣は会場では示されなかった。

■参考トピックス■
◆2001.10.30 日本高血圧学会速報】日本高血圧学会、高血圧治療ガイドライン「JSH2000」の評価と問題点を公開の場で討議


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