2001.10.29

【日本高血圧学会速報】 高齢者の血圧はどこまで下げるべきか、エビデンスの解釈で紛糾

 わが国の高血圧治療ガイドライン「JSH2000」では、特段の合併症がない場合、60歳以上の高齢者には若年者よりも一段緩やかな血圧管理基準を設けている。しかし、介入試験で「高齢者では若年者ほど血圧を下げなくても良い」ことを示したデータは存在しない。いわば確固たるエビデンスに拠らない管理基準であり、その妥当性を巡る議論が繰り返されてきた。

 10月27日の教育セッション2「DEBATE:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2000年版‐その評価と問題点」(関連トピックス参照)では、最後にこの大きな課題について、東京都老人医療センター循環器科の桑島巌氏が積極的な降圧を図る立場、神奈川県足柄保険福祉事務所の築山久一郎氏が慎重な降圧を行う立場で、それぞれの意見を開帳した。

高齢者の別枠扱いは“思い込みによる冤罪”、若年者と同等の降圧を

 桑島氏はまず、わが国で高齢者の血圧管理に年代別基準が採用されたのは、「(動脈硬化・臓器障害が進展している)高齢者では下げすぎが害になる」との“思い込み”から生じた事実誤認だと断じた。支持的なエビデンスとして挙げられているのは、あくまで後付け証拠や状況証拠であり、「冤罪と同じ構図」(桑島氏)と強調。高齢者でも若年者と同じく、収縮期血圧で130〜139mmHgを降圧目標とすべきだとした。

 また、高齢者も参加した降圧薬の臨床試験で、年齢別に解析すると高齢者の方が降圧療法の効果が少なくみえるのは、相対的なリスクで評価したためと指摘。脳卒中など高血圧の合併症として生じる疾患では、絶対的な発症リスクは高齢者の方が高いため、「絶対的なリスク減少度で評価すれば、積極的な降圧で高齢者でも若年者と遜色ないメリットが得られる」と述べた。

高齢者では薬物代謝・排泄が低下、少量の降圧薬による慎重な管理を

 一方の築山氏は、高齢者に慎重な降圧が求められる理由には、血圧動揺性の大きさや潜在的な臓器循環障害の多さ、薬物の代謝・排泄の遅延など、降圧に関するエビデンス以外にも様々な理由があると反論。降圧薬の介入試験結果だけに根拠を求めるべきではないとした。

 その上で、現在までに得られた降圧に関するエビデンスを再解析しても、「高齢者において積極的な降圧が消極的な降圧よりも優れる」ことを直接的に示すデータはないと指摘。治療効果に差がなければ、服用薬剤数を増やして副作用を誘発する危険性がある「積極的な降圧」よりも、少量の降圧薬で管理する「慎重な降圧」の方が高齢者には望ましいと強調した。

 なお、高齢者においては「拡張期血圧の下げすぎはリスクが高い」という点で両者の意見は一致。ディベート後の質疑応答では、収縮期血圧と拡張期血圧の差、つまり脈圧に基づいた血圧管理が重要であることを両者が改めて強調した。

GLの次期改定は5年後、会員の意見や日本のエビデンスを反映

 このほか、ディベートの中で各演者が論拠として様々な大規模試験結果を提示したためか、質疑応答では複数の質問者から、高血圧患者を「集団として捉える」ことへの懸念が示された。大規模臨床試験はガイドラインという大枠の指針を作成するためには欠かせないが、そこで得られた結果がすべての患者に当てはめられるわけではないためだ。

 フロアから出された「個々の患者に応じた治療の必要性が、ガイドライン内でもっと強調されて良いのではないか」との意見に対し、総合司会を務めた九州大学名誉教授の藤島正敏氏は「次回の改訂で配慮したい」と返答。同じく総合司会を務めた慶応大学内科教授の猿田享男氏も「ガイドラインを少しでも良いものにしていくために、皆様からのご意見や、日本での大規模臨床試験の結果を反映した改訂版を5年後には作成したい」と述べた。

■ 関連トピックス ■
◆ 2001.10.30 日本高血圧学会速報】日本高血圧学会、高血圧治療ガイドライン「JSH2000」の評価と問題点を公開の場で討議


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