2001.10.28

【日本高血圧学会速報】 高血圧治療の指標は降圧か臓器保護か、Ca拮抗薬の位置付け巡り議論

 10月27日の教育セッション2「DEBATE:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2000年版‐その評価と問題点」(関連トピックス参照)の最初の議題は、カルシウム(Ca)拮抗薬の位置付け。日本高血圧学会の治療ガイドライン「JSH2000」で、事実上他系統の降圧薬よりも優先して用いる薬剤とされるCa拮抗薬について、3人の演者がそれぞれの立場から意見を述べた。

降圧有効性高いCa拮抗薬、病態に合わせ第一選択薬として使用を

 「臓器保護を強調するあまり、血圧はさほど下げなくても良いというような風潮がある。しかし、高血圧管理はまず、24時間血圧を下げることが第一であることを忘れないで欲しい」。旭川医科大学第一内科の菊池健次郎氏は、Ca拮抗薬を積極的に使うべきとの立場から、降圧を主眼にした場合のCa拮抗薬の優位性を訴えた。

 菊池氏はまず、Ca拮抗薬にはジルチアゼムでの心ブロック以外、目立った禁忌がない点を強調。世界保健機関/国際高血圧学会(WHO/ISH)が行った降圧薬臨床試験のメタ分析で「強力な降圧」の方が脳卒中や冠動脈疾患の発症予防に有用と示された点や、わが国で行われた第3相試験結果の比較から、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬よりもCa拮抗薬の方が有効降圧率が高いことなどを提示して、「十分な降圧を図るためには、降圧有効性が高いCa拮抗薬を、病態に合わせて使うべき」(菊池氏)と述べた。

臓器保護のエビデンス豊富なACE阻害薬、病態によっては第一選択薬に
 
 これに対し自治医科大学循環器内科の島田和幸氏は、「血圧は下げるほど良い」との考え方が現在の主流の一つであり、その意味でCa拮抗薬が魅力的であることを容認。その上で、臓器保護の観点からの薬剤選択を支持するエビデンスが出揃い始めたことを紹介した。

 臓器保護を主眼とした場合、現状ではACE阻害薬の有用性に関して豊富なエビデンスが得られている。島田氏は、Ca拮抗薬とACE阻害薬とを比較した臨床試験のメタ分析で、冠動脈疾患と心不全ではACE阻害薬の方が予防効果が優れるとの結果を提示。「(心不全などの)合併症を伴う高血圧では、まずACE阻害薬を処方し、降圧が不十分ならCa拮抗薬に変更したり、Ca拮抗薬を併用するとの戦略も成り立つ」と述べ、一律にCa拮抗薬を第一選択薬とせず、合併症を考慮した処方を考えるべきである点を強調した。

Ca拮抗薬は他薬との併用で有用性が増強、配合剤の開発と普及を

 最後に登壇した横浜高血圧研究センターの金子好宏氏は、冒頭に脳卒中による年齢調整死亡率の推移を提示。1980年代まで低下を続けていた脳卒中死亡率が、1990年代に入って横這いが続いているのは、高血圧患者への降圧治療が依然として不十分であるためとした。

 金子氏は「Ca拮抗薬で降圧が不十分な場合、わが国では多くの医師がCa拮抗薬の増量で対処しているが、複数の昇圧機序が存在することを考えると増量より併用を考慮すべき」と強調。2系統以上の降圧薬を配合した配合剤は「単独剤よりも優れた高血圧治療薬となる可能性が大きい」と述べ、1剤で併用療法を行える配合剤の開発と普及に重点を置くことを訴えた。

■ 関連トピックス ■
◆ 2001.10.30 日本高血圧学会速報】日本高血圧学会、高血圧治療ガイドライン「JSH2000」の評価と問題点を公開の場で討議

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 MedWaveは日本高血圧学会の開催を機に、「高血圧治療に関する調査」を実施します。医療現場の第一線で活躍されている先生方に、高血圧治療の方法や考え方、降圧薬の処方経験、高血圧治療に関する情報ニーズなどをお伺いし、高血圧治療の実態を明らかにすることを目的としております。調査結果は後日、MedWave上で紹介する予定です。
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