2001.10.26

【日本高血圧学会速報】 日本人におけるエビデンスの確立を−−降圧薬の大規模臨床試験が続々スタート

 高血圧など多くの国民が罹患する疾患について、診療水準の標準化を目指し、ここ数年でわが国でも様々な診療ガイドラインが発表されるようになった。ただし、根拠となるエビデンスは、主に欧米で行われた大規模臨床試験に拠るもの。欧米人を対象に得られた知見が「日本人にも本当に当てはまるのか」との点が、常に課題となっていた。

 しかし、こと高血圧に関しては、こうした状況が今後数年で様変わりしそうだ。これは、高血圧患者を対象とした数千人規模の臨床試験が、今年から来年にかけて相次いでスタートするため。10月26日に行われた一般演題「高血圧臨床試験」では、「JATOS」「CASE-J」「HOMED-BP」という三つの大規模臨床試験について、対象患者や降圧目標値、使用降圧薬などの詳細が発表された。

 「JATOS」は、高齢の高血圧患者を対象に、降圧目標値で2群に分けて心血管合併症の予防効果を比較するもの。予定登録患者数は4000人で、カルシウム(Ca)拮抗薬の塩酸エホニジピンで介入し、2年間追跡する。今年1月から2002年12月まで患者登録を行い、2004年12月まで観察する。日本臨床内科医会と日本高血圧学会の有志が共同で実施する臨床試験だ。

 一方の「CASE-J」は、京都大学大学院医学研究科EBM共同研究センターを核に、慶応大学内科の猿田享男氏が研究代表者となって行う臨床試験。心血管疾患の危険因子を持つ高血圧患者を対象に、降圧薬(Ca拮抗薬またはアンジオテンシン2《A2》受容体拮抗薬)で2群に分けて、突然死や脳卒中、急性心筋梗塞や腎障害の進展度などの予防効果を比較する。予定登録患者数は4000人で追跡期間は3年間。今年9月から患者登録を始めており、2002年12月まで患者登録を実施、2005年12月まで観察する。

 興味深いのは、高齢者の降圧目標値について、「JATOS」と「CASE-J」とでは異なる数値を採用している点だ。「CASE-J」は、日本高血圧学会が昨年発表した高血圧治療ガイドライン「JSH2000」に即した年代別の降圧目標値を設定している。一方の「JATOS」は、年代に関わらず、2種類の降圧目標値で予後を比較するという設計だ(関連トピックス(1)参照)。高齢者での年代別降圧目標値は、日本のガイドライン独自のもの。議論の尽きない点だけに、両臨床試験の結果が注目される。

 第3の臨床試験「HOMED-BP」は、前2者とは様相を異にする。外来血圧ではなく、家庭血圧を指標に臨床試験が行われるのだ。中高年〜高齢の高血圧患者を対象に、降圧薬(Ca拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはA2受容体拮抗薬)で3群、降圧目標値で2群の計6群(3×2)に分けて、臓器障害過程の差や至適降圧値を検討する。予定登録患者数は9000人で追跡期間は7年間。来年1月から4年間、患者の本登録を行い、2012年末まで観察する。

 「HOME-BP」のもう一つの特徴は、登録患者が家庭で測定した血圧値の集積や、治験参加医への処方薬剤の指示などに、情報通信(IT)技術が活用される点(関連トピックス(2)参照。IT技術の臨床研究に対する活用事例としても、注目を集めそうだ。

■ 関連トピックス ■
(1)◆ 2001.10.29 日本高血圧学会速報】高齢者の降圧目標値を巡る議論に一石、大規模試験「JATOS」が検証するもの
(2)◆ 2001.10.29 日本高血圧学会速報】IT技術を活用した高血圧大規模臨床試験「HOMED-BP」、参加医師数が350人に

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