2001.10.26

【日本高血圧学会速報】 ACE阻害薬に腎機能障害の抑制作用あり、「傾向スコア分析」で示唆

 腎機能障害はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の服薬により進みにくくなることが知られている。しかし、ACE阻害薬が機能障害を直接抑制している場合以外に、予後に優れた腎疾患に投薬されているケースも考えられる。こうした問題は無作為化二重盲験試験(RCT)を行えば解決できるが、ランダム化に対する倫理的、コストなどの問題のためにRCTの実施が困難な場合が少なくない。そこで、東京女子医科大学第四内科の平林あゆみ氏らは、傾向スコア(propensity score)分析という統計手法を用いて、ACE阻害薬の腎機能障害抑制作用を検討し、その結果を日本高血圧学会総会の一般演題「薬物療法(1)」で10月25日に発表した。

 傾向スコア分析は、比較する2群間で規定因子をあらかじめ定め、2群間の性質や状態が同じようになるようそれらの因子でグループの要素を抽出した上で、両群を比べる統計学的手法。ランダム化による比較試験に近い結果が得られることが期待できるという。

 対象は、1986年8月から2001年9月までにおける同科の外来患者のうち、降圧剤を使用し、かつ使用前後において血清クレアチニン値を測定していた患者641人(ACE阻害薬の使用患者320人、非使用患者321人)。傾向スコアの因子には腎機能障害に関与すると思われる34項目の因子を決め、これらの因子とエンドポイントとの関係をロジスティック解析し、各因子の係数を算出した。なお、34項目の因子は、年齢、性、薬剤投与開始時の血清クレアチニン値、尿中蛋白、IgA腎症などの原疾患、カルシウム拮抗薬といった治療薬、高尿酸血症などの合併症と決め、エンドポイントは、投薬開始時における血清クレアチニン値が1mg/dl上昇した時とした。

 641人の中から、傾向スコアが近似する250人の患者(ACE阻害薬の使用患者125人、非使用患者125人)を選び出し、使用と非使用の各群でKaplan-Meier生存曲線によるエンドポイント回避率を比較した。その結果、ACE阻害薬使用群は非使用群より有意に回避率が高かった(p<0.001)。

 さらに、血圧や血清クレアチニン値についてのサブ解析も行った。血圧130/85mmHg以上(161人)とそれ未満(89人)に分けて、同様にエンドポイント回避率をみると、ともに使用群の方が有意に高かった(それぞれp<0.001、p<0.005)。また、投薬開始時の血清クレアチニン値が2mg/dl以上(81人)とそれ未満(169人)に分けてみても、両方とも使用群が有意に高かった(ともにp<0.001)。

 こうした結果を踏まえ、平林氏は、「ACE阻害薬が腎機能障害抑制作用を有することが示唆され、同薬の腎保護作用は血圧や血清クレアチニン値に非依存的に有効であると推察される」と語った。


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◆「高血圧治療に関する調査」ご協力のお願い

 MedWaveは日本高血圧学会の開催を機に、「高血圧治療に関する調査」を実施します。医療現場の第一線で活躍されている先生方に、高血圧治療の方法や考え方、降圧薬の処方経験、高血圧治療に関する情報ニーズなどをお伺いし、高血圧治療の実態を明らかにすることを目的としております。調査結果は後日、MedWave上で紹介する予定です。
 ご多忙のところ恐縮ですが、何卒ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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