2001.10.26

【日本高血圧学会速報】 慢性腎炎患者へのR-A系抑制薬、ACE阻害薬とA2受容体拮抗薬で作用に違い

 慢性腎炎を合併した高血圧患者46人を対象とした臨床試験で、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬とでは、尿蛋白の減少量やレニン活性の推移などに違いがあることがわかった。いずれの薬もレニン‐アンジオテンシン系(R-A系)を抑制するが、理論的だけでなく臨床的にも作用が違うことを示唆するもので、R-A系抑制薬がどのように腎保護作用を示すかを解明する大きな一歩となりそうだ。研究結果は、慶応大学内科の熊谷裕生氏らが、10月25日の一般口演で発表した。

 熊谷氏らは、複数の大規模臨床試験でACE阻害薬やA2受容体拮抗薬の腎保護作用が示されているが、1.対象は大半が糖尿病性腎症患者で、慢性腎炎に対する腎保護作用を検討したものはまれ、2.ACE阻害薬とA2受容体拮抗薬とを直接比較したものはない−−の2点に着目。高血圧を伴う慢性腎炎患者を対象に、ACE阻害薬とA2受容体拮抗薬とを直接比較する臨床試験を行った。

 臨床試験の対象は、基礎疾患として慢性腎炎があり、外来血圧が140/90mmHg以上で、中等度の腎障害(血清クレアチニン値が1.3〜3.0mg/dlまたは尿蛋白量が70mg/dl以上)がある46人。熊谷氏らは、これらの患者を無作為に2分し、A2受容体拮抗薬またはACE阻害薬を処方して1年半追跡した。降圧目標値は130/85mmHg未満に定め、目標に達しない場合は3カ月後からカルシウム(Ca)拮抗薬を追加投与した。最終的に両群とも約7割の患者にCa拮抗薬を併用している。

 その結果、血清クレアチニン値については、両群とも1カ月後に15〜20%上昇。3カ月後には治療開始前のレベルに戻り、1年半後までその水準で推移した。一方、尿蛋白量は両群とも治療開始1カ月後から減少し始めたが、ACE阻害薬群(22人)は6カ月後、A2受容体拮抗薬群(24人)は9カ月後以降に横ばいとなった。そのため、1年半後にはA2受容体拮抗薬群の方がACE阻害薬群よりも有意に尿蛋白量が減少していた。

 興味深いのは、レニン活性や血漿アルドステロン濃度の推移に両群で違いがみられたことだ。血漿レニン活性または活性レニン濃度を測定したところ、両群共に6カ月後に上昇が認められた。これは、R-A系の抑制により、反射的なレニンの亢進が起こるためだ。しかし、ACE阻害薬群ではその後も高い水準でレニン活性が推移したのに対し、A2受容体拮抗薬群では、6カ月後をピークに低下し、1年半後にはほぼ治療前の水準にまで戻っていた。

 また、血漿アルドステロン濃度については、両群共に低下するものの、低下幅はA2受容体拮抗薬の方が大きく、1年後以降は有意な差が付いた。これは、ACE阻害薬投与群で4人に、いったん低下したアルドステロン濃度が元に戻る「エスケープ現象」がみられたためだ。A2受容体拮抗薬群では、エスケープ現象は一人も認められなかった。

 以上から熊谷氏は「レニン活性やアルドステロン濃度の推移に両薬で違いがあるのは、A2受容体拮抗薬に、傍糸球体細胞の機能抑制や末梢腎交換神経活動を低下させる作用があるためではないか」と推察。この違いが、尿蛋白量の減少度の違いとして現れた可能性があるとした。

 ただし、発表後の質疑応答では「血清クレアチニン値には違いが無い。尿蛋白量の減少度の違いだけで、A2受容体拮抗薬の方がACE阻害薬よりも腎保護作用に優れると受け取られかねない発表は早計」との趣旨の意見も出された。より大規模で長期的な、腎不全の進行抑制を評価項目とする臨床試験が行われることに期待したい。


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