2001.10.26

【日本高血圧学会速報】 腎不全発症の地域差、ACE阻害薬処方量の地域差と逆相関

 わが国における末期腎不全の発症率には「西高東低」の地域差があるが、高血圧などの治療に用いられるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬では、処方量が「東高西低」の分布を示すことがわかった。ACE阻害薬は、高血圧患者などの腎機能障害進行を抑える効果がある降圧薬。処方量の地域差は、腎不全発症率の地域差を合理的に説明するものとして注目されそうだ。この研究結果は、名古屋市立大学第3内科助手の宇佐美武氏らが、10月25日のポスターセッションで発表した。

 宇佐美氏らはまず、日本透析医学会が毎年公表している、都道府県別の新規透析導入者(末期腎不全発症者)数を分析。北海道、東北、関東など11地域別に、人口当たりの透析導入患者数を調べた。すると、北海道と東北、北陸の3地域では末期腎不全の発症率が低いのに対し、四国、九州、沖縄の3地域では発症率が高く、全体として「西高東低」の傾向を示すことがわかった(JAMA;286,2622,2000)。

 日本人は比較的均質な人種で、遺伝的な背景からこうした地域差を説明するのは難しい。そこで宇佐美氏らは、この地域差には何らかの環境要因が働いていると推測。透析導入時の平均年齢や高齢者の割合、地域ごとの腎臓専門医数や、人口当たりの降圧薬消費量(金額ベース)などを調べ、末期腎不全の発症率との相関を検討した。

 その結果、降圧薬の消費量と末期腎不全の発症率との間に、逆の相関があることが判明。多変量解析を行ったところ、降圧薬のなかでもACE阻害薬だけに、末期腎不全の発症率との逆相関があることが明らかになった。

 このことから宇佐美氏らは「ACE阻害薬の消費量は、末期腎不全の発症に対して独立した抑制因子として働いている」と結論。ACE阻害薬の腎保護作用は複数の臨床試験から既に明らかにされているが、「今回の結果から、日常臨床においても、ACE阻害薬が腎不全の進行を抑えることが疫学的に証明された」と述べた。

 発表後の質疑応答では、「腎機能が悪化すると、現状ではACE阻害薬の処方が中止されるケースが多い。その影響で、末期腎不全の発症率が高い地域では、ACE阻害薬の処方量が低下したとは考えられないか」との質問が出された。これに対し、宇佐美氏は「高血圧患者全体に占める末期腎不全発症者の割合はわずかで、仮に腎機能が悪化した人にACE阻害薬の投与が中止されたとしても、全体に与える影響は少ない」と指摘。地域差にみられる逆相関は、ACE阻害薬の処方量が多い地域で腎不全の進行が抑えられたためと捉える方が自然だとした。


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 MedWaveは日本高血圧学会の開催を機に、「高血圧治療に関する調査」を実施します。医療現場の第一線で活躍されている先生方に、高血圧治療の方法や考え方、降圧薬の処方経験、高血圧治療に関する情報ニーズなどをお伺いし、高血圧治療の実態を明らかにすることを目的としております。調査結果は後日、MedWave上で紹介する予定です。
 ご多忙のところ恐縮ですが、何卒ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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