2001.10.05

【日本痴呆学会速報】 アルツハイマー病治療のオーストラリアの現状、P. Henschke氏が報告

 薬物、非薬物を含めて、アルツハイマー病の治療をどのように行うべきか――。こうした問題を考える第20回日本痴呆学会学術集会のサテライトシンポジウム「痴呆の治療」において、オーストラリアRepatriation総合病院のPhilip Henschke氏が10月4日、日本と異なり政府がアルツハイマー病の治療方針を定めているオーストラリアの現状などについて講演した。

 オーストラリアの痴呆治療で導入されている薬事ベネフィット・スキーム(PBS;Pharmaceutical Benefit Scheme)について、まず説明を行った。PBSは経済的な効果などを考慮して、政府の委員会が推奨する薬剤リストや、使用を制限している高価格の薬剤などがまとめられているという。例えば、1.専門の内科医もしくは精神科医がミニ・メンタル・ステート検査(MMSE)を行い、その点数が10〜24点であれば軽度から中等度のアルツハイマー病と診断しコリンエステラーゼ阻害薬を投与する、2.治療を始めてから6カ月以内に治療効果の判定を行い、例えばMMSEが2ポイント以上、あるいは認知機能を評価するためのアルツハイマー病認知機能評価スケール(ADAS-Cog;Alzheimer's Disease Assessment Scale, cognitive subscale)が4ポイント以上改善していないと、同薬を使った治療を継続できない――などと決められているという。

 さらに、コリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル(商品名:アリセプト)、リバスチグミン(同:Exelon、本邦未発売)、ガランタミン(同:Reminyl、本邦未発売)の臨床試験結果についてそれぞれ述べた。それらを踏まえて、軽度から中等度のアルツハイマー病に対するコリンエステラーゼ阻害薬の使用は、様々な臨床試験結果を収集し、評価・解析結果が収載されているCochrane Reviewsなどにより支持されているが、6〜12カ月を超えて病気の進行を抑える効果については、強力なエビデンスはないなどと説明した。

 このほか、これまで効果があると言われている、ビタミンE、イチョウ葉、エストロゲン(女性ホルモン)、モノアミンオキシダーゼB遮断薬のセレジリンなどの治療効果を紹介。さらに、将来的に有望と考えられるアルツハイマー病の治療法として、βアミロイドワクチン、アミロイドβの生成を阻害するγセクレターゼ阻害薬、神経成長因子刺激薬を挙げた。

 Henschke氏は痴呆ケアについても簡単に触れ、世話をしている人へのケアが重要との認識を示した。日本と同様にオーストラリアでも、家族によるケアから資金的な裏づけがある公的なケアに少しずつ移行していると述べた。同氏は、アルツハイマー病について、「まだ治癒させることはできない。症状を悪化させる恐れはあるものの、症状を緩和させることはできるし、何より介護ケアにより常に助けることができる」と語った。

 なお、このサテライトシンポジウムは、日本痴呆学会、エーザイ、ファイザー製薬の共催で行われた。

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