2001.10.03

【日本胸部外科学会速報】 手術リスク評価法「E-PASS」が呼吸器外科でも有用、術後合併症リスクを術前評価

 手術侵襲と患者の生体機能とをスコア化し、術後合併症のリスクを算定する新しい手術リスク評価法「E-PASS」が、呼吸器外科領域でも有用であることが明らかになった。特別な検査などが不要で、市中病院でも使える評価法であり、リスク管理の指標として普及が期待できそうだ。国立熊本病院外科の山下眞一氏、芳賀克夫氏らが、10月3日に行われたポスターセッションで発表した。

 E-PASSは、術後合併症のリスクをスコア化する評価法。芳賀氏らが1998年に開発した。消化器領域の予定手術を受けた292人のデータを重回帰分析し、術後合併症への寄与因子を抽出して作成した。

 具体的には、患者側の因子として1.年齢、2.重症心疾患の有無、3.重症肺疾患の有無、4.糖尿病の有無、5.全身状態(PS)、6.麻酔リスク−−の六つから術前リスクスコア(PRS)を算出。手術に関する因子として1.体重当たりの出血量、2.手術時間、3.切開創の範囲−−の三つから手術侵襲スコア(SSS)を求め、このPRSとSSSから総合リスクスコア(CRS)を算定する。消化器外科領域での検討では、CRSが大きくなるほど、術後合併症の発症率や院内死亡率が高くなることが確認されている。

 山下氏らは今回、このE-PASSが、肺癌の手術についても適用できるかどうかを検討した。1995年1月から2000年11月まで、地域中核病院3施設で手術を受けた肺癌患者391人に対し、E-PASSで求めた各スコアと術後経過とをレトロスペクティブ(後ろ向き)に検討した。

 その結果、CRSが大きくなるほど、術後合併症の発症率が高くなることが判明。術後合併症の重症度とも正の相関がみられ、呼吸器外科領域でも、E-PASSが術後合併症の発生予測に役立つことがわかったという。

 ただし、院内死亡率については、呼吸器外科領域ではCRSとの明確な相関はみられなかった。この点について山下氏は「消化器癌の場合、患者の全身状態が悪くても、食物の不通過や腫瘍からの出血があれば手術を行わざるを得ない。肺癌ではそのような病態がなく、ハイリスク者に対しては手術を行わないため、CRSスコアが消化器癌よりも低くなったことが主因ではないか」と説明している。

 なお、E-PASSによる術後合併症評価については、3年間のプロスペクティブ(前向き)研究が2000年度からスタートしている。厚生労働省の長寿総合科学研究の一環として、肺癌、胃癌、大腸癌の3種類の癌の手術を受ける70歳以上の高齢者を対象としたもので、来年にも中間結果が発表される予定だ。

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