2001.09.28

【日本癌学会速報】 抗癌薬の転移抑制効果に臓器特異性、多臓器転移のモデル動物実験で解明

 徳島大学第3内科の三木豊和氏らは、癌が骨や肺、肝臓など、多臓器に転移する疾患モデル動物を確立。このモデル動物に3種類の薬剤を投与したところ、薬剤によって転移抑制が起こる臓器が異なることを見出した。三木氏らはこの研究結果を、9月27日のポスターセッションで発表した。

 三木氏らは、胸腺などが生まれつき欠如している免疫不全マウス(SCIDマウス)を、抗体で処理してナチュラルキラー細胞(NK細胞)を除去。このマウスにヒトの小細胞肺癌株SBC-5を静脈内投与して発癌させ、多臓器転移のモデル動物とした。このマウスは、放置すれば肺や骨、肝臓、腎臓、リンパ節など、様々な臓器に癌が転移する。

 こうして得られた多臓器転移モデルマウスに、1.抗癌薬のエトポシド、2.骨粗鬆症治療に用いられるビスフォスフォネート製剤(ビス製剤)のアレンドロネート、3.癌細胞が特異的に分泌する副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)に対する抗体(抗PTHrP抗体)−−という3種類の薬剤を投与。35日目に犠牲死させて、癌の部位別転移や体重減少、高カルシウム血症の抑制効果を調べた。

 その結果、エトポシドを投与したマウスでは、肺とリンパ節に対する転移抑制効果がみられたが、腎臓や肝臓、骨への転移は抑制せず、体重減少や高カルシウム血症を防ぐ効果もなかった。一方、アレンドロネートや抗PTHrP抗体を投与したマウスでは、骨転移が選択的に抑制され、他の臓器への転移を防ぐ効果はなかったものの、高カルシウム血症や体重減少の防止効果がみられた。

 これらのデータから、三木氏は「肺小細胞癌の多臓器転移を制御するには、抗癌薬だけでなく、アレンドロネートや抗PTHrP抗体などを併用した集学的治療が必要」と指摘。今回の実験では、アレンドロネートと抗PTHrP抗体とで骨転移などの抑制効果に違いはみられなかったが、骨転移巣の局所だけに作用する“分子標的治療”という観点からは「抗PTHrP抗体の方が(抗癌薬への併用薬として)適しているのではないか」とした。

 三木氏らは今後、他の抗癌薬やビス製剤の効果を調べるほか、抗癌薬とビス製剤または抗PTHrP抗体を併用した場合の転移抑制効果などについて検討を進める予定だ。また、今回の実験に用いた抗PTHrP抗体は、ヒトとマウスのキメラ抗体なので、「ヒト化した抗体を用いた実験も行いたい」と三木氏は述べた。

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