2001.09.21

【日本体力医学会速報】 脳卒中既往者の運動療法、障害に合わせた強度設定を

 脳卒中の一次・二次予防に運動療法が効果的なことは知られているが、片麻痺などの障害が残った人の場合、ごく軽い運動しかできないことも多い。東北大学大学院内部・高次機能障害学講座教授の上月正博氏は、シンポジウム4「運動障害者における体力増進の意義」で、脳卒中既往者に対する運動療法の効果を紹介。「ごく軽い運動でも、継続して行えば、糖代謝異常を改善し得る」(上月氏)ことを示した。

 降圧薬などの薬物療法や、CT装置の普及などにより、脳卒中を発症しても命を落とすケースは減少しつつある。しかし、その分「脳卒中後遺症者」の数は増えており、新たな社会問題となりつつある。

 脳卒中の怖さは、片麻痺など直接的な後遺症に加え、発症後の安静・臥床で「廃用症候群」が起こることにある。上月氏によると、廃用症候群では筋肉や骨、心血管や内分泌など全身の臓器で機能低下が起こり、心理面や生活の質(QOL)も悪化するという。さらに、こうした機能低下が肥満やインスリン抵抗性の上昇、糖尿病や動脈硬化につながり、脳卒中を再発しやすくなる。

 一度脳卒中になると、わが国では5年以内に30〜50%の人が脳卒中を再発している。脳卒中で入院する人の3割は再発例だ。そのため、初発の予防もさることながら、再発の予防も大きな課題となってきた。

 この脳卒中の再発予防手段として、近年注目を集めているのが運動療法だ。海外で行われた複数の臨床試験で、運動療法に脳卒中の1次・2次予防効果があることが実証されており、米国心臓協会(AHA)が1999年に発表した脳卒中の再発予防ガイドラインでも運動療法が取り上げられている。

 ただし、予防に必要とされる運動量は、「少なくとも週に3〜4回、1回30〜60分の有酸素運動」という、脳卒中既往者にはかなりハードなもの。そこで上月氏らは、発症後約70日の脳卒中既往者23人を対象に、個々人の障害に合わせた運動療法を2カ月間実施。自立歩行が可能な9人と、自力では歩けない14人について、日常生活動作(ADL)や糖・脂質代謝の改善度を調べた。

 その結果、ADLについては、自力歩行が可能だった9人ではほぼ完全に回復した。一方、自力では歩けなかった14人については、着替えやトイレはほぼ自分でできるようになったものの、階段の上り下りはできず、一人歩きも難しいままだった。しかし、自力歩行が難しかった人でも、運動療法でインスリン抵抗性などの糖代謝異常は著明に改善。障害に合わせたごく軽い運動(身体活動)でも、継続することで脳卒中再発の危険因子を軽減できることがわかった。

 このことから上月氏は「後遺症が残った人など運動耐容能が低い人でも、運動量をわずかに増やすだけで、健康に良い影響を及ぼし得る」と強調。ただし、運動で虚血性疾患を生じることもあるため、運動療法を行う前には、必ず運動負荷試験を行うことが大切だとした。

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