2001.09.20

【日本体力医学会速報】 高血圧や糖尿病への運動療法、過度な運動で臓器障害の恐れ

 東京慈恵会医科大学臨床検査医学の鈴木政登氏は、9月19日に「生活習慣病に対する運動療法の功罪‐高血圧、糖尿病、痛風の場合‐」と題した教育講演を実施。運動の強さによっては腎臓などに障害が起こる恐れがあることを示し、運動処方を出す医師や、運動指導を行う健康運動指導士などに向け注意を喚起した。

 高血圧などの生活習慣病患者に対する運動療法に、診療報酬が認められたのは1996年。以来、運動療法は着実な広がりを見せており、現在では高血圧のほか、糖尿病と高脂血症についても健康保険でカバーされるようになっている。

 こうした状況に対し、鈴木氏は「病める臓器を持つ者には、運動がデメリットとなる可能性がある」と指摘。高血圧、糖尿病と、中高年に多い痛風について、運動の功罪を動物実験や臨床研究で検証した。

 その結果、自然発症高血圧ラット(SHR)を用いた動物実験で、運動には薬(アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬のカプトプリル)ほどの降圧効果は認められず、心肥大や腎障害も引き起こし得ることが判明。ただし、薬と運動を併用した群には特段の副作用はみられなかったため、「運動だけで十分に血圧が下がらない人には、無理をして運動を強化するよりも、薬剤を併用した方が望ましい」と述べた。

 糖尿病については、蛋白尿(顕性蛋白)を生じていない糖尿病患者を対象とした介入試験の結果を提示。介入開始時に血糖コントロールが良くなかった人では、運動により尿中のアルブミン値などが上がることを示し、運動により腎障害が進展する恐れがあることを示唆した。

 また、肥満・糖尿病モデルラット(OLETF)を用いた実験で、腎障害は運動強度に比例するが、低強度の運動では減量や糖・脂質代謝がほとんど改善しないことを提示。糖尿病患者に運動療法を行う際には、「糖・脂質代謝の改善が十分でない場合は、運動療法に食事療法や薬物療法を併用し、かつ尿中アルブミンによる腎障害進展のチェックを随時行うことが望ましい」とした。

高尿酸血症合併者にはATレベル以下の運動を

 さらに、糖尿病や肥満の患者が合併することの多い痛風(高尿酸血症)についても、鈴木氏は運動の影響を検証した。健常人が激しい運動をすると、翌日まで尿酸値が高い状態が続くが、この尿酸生成の亢進が嫌気性運動によって惹起されることを提示。高尿酸血症を合併した生活習慣病患者に運動指導を行う場合は、嫌気性代謝閾値(AT)を上回らない、自覚的運動強度(PRE、ボルグ指数)で11〜13(楽である〜ややきつい)に相当する運動強度を指示するよう勧告した。

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