2001.09.13

【EASD学会速報】 糖尿病性血管障害の発症率に民族差、英国の研究が示唆

 同じ治療を受けていても、糖尿病に足の潰瘍や末梢神経障害、末梢血管障害を合併する頻度には、どうやら“民族差”があるらしい。英国で行われたNorth West Diabetes Foot Care Studyの一環として、英国北西部の6地域に住む約1万人の糖尿病患者を対象とした研究が、糖尿病性血管障害の民族差に光を当てた。研究結果は、英国Diabetes FootクリニックのC. A. Abbott氏らが9月11日の一般口演で発表した。

 この研究の対象となったのは、上述の6地域で2年以上治療を受けていた糖尿病患者9710人。うち白人(コーカソイド)は8508人で、全体の87%を占める。次に多いのがインド、パキスタン、バングラデッシュなど南アジア出身の人で920人(9.5%)。アフリカ系カリブ人は260人(2.7%)で、その他の民族は22人(0.2%)だった。各民族グループの男女比はほぼ等しい。

 これらの患者について、糖尿病の合併症としてしばしば生じる症状を調べたところ、足部潰瘍、足部変形、末梢神経障害と末梢血管障害のいずれも、南アジア人は白人に比べて有意に罹患率が低かった。足部潰瘍の罹患率で見ると、白人は5.2%、カリブ人で3.1%、南アジア人で1.5%となる。下肢切断はそれぞれ1.4%、0.8%、0.4%となった。

 一方、糖尿病性血管障害の危険因子となる、喫煙や飲酒などの生活習慣についても、民族による違いがみられた。喫煙率は白人の61%に対し、カリブ人は37.4%で南アジア人は25.7%。1週間あたり7単位(1単位は無水アルコール9gに相当)以上飲酒する人の比率も、それぞれ49.1%、43.2%、8.2%となった。

 次にAbbott氏らは、足の潰瘍の罹患率について、南アジア人の白人に対するオッズ比を算出。このオッズ比は0.29(p<0.0001)となり、南アジア人は白人よりも有意に足の潰瘍を合併しにくいことがわかった。

 ただし、南アジア人の平均年齢は55.4歳で、白人とカリブ人の61.9歳より若く、糖尿病の罹病期間も白人(8.4年)やカリブ人(8.7年)よりも短い7.1年だ。そこでAbbott氏らは、足の潰瘍を発症するオッズ比を、年齢および罹病期間で補正した。すると、オッズ比は0.38(p=0.0004)になり、無補正の場合よりもやや増加したが有意差は残った。さらに、末梢神経障害、末梢血管障害、足の変形と喫煙を補正に加えると、オッズ比は0.54(p=0.016)となったが、それでも「南アジア人の方が白人よりも糖尿病に足の潰瘍を合併しにくい」との傾向は変わらなかった。

 これらのデータから、Abbott氏らは「補正でオッズ比が増加したことを考えると、純粋な民族差ではなく、民族間にみられる末梢神経障害など他の合併症や喫煙の頻度の違いが、足の潰瘍の発生率に影響しているようだ」と指摘した。しかし、補正後も有意な違いが残ったことから、「民族間の遺伝的な違い、あるいは食生活なども、足の潰瘍の発症に関与している可能性がある」と推測した。

 発表後の質疑応答で、会場から「南アジア人で血行障害が少なかったのは、スパイスとの関わりがあるのではないか」とのアドバイスがあり、笑い声とともに会場をなごませた。一方、今回の研究では白人グループに英国人のほか、心血管疾患の発生が少ないフランス人も含まれているため、民族グループの再検討を促す声も聞かれた。(八倉巻尚子、医療ライター)


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