2001.09.10

【日本遺伝子診療学会速報】 21番染色体上の既知遺伝子、自己免疫性疾患や難聴の責任遺伝子含み153個に

 国際ヒトゲノム計画で、わが国が解読の一部を担当した21番染色体には、2001年5月現在で153個の既知遺伝子が存在することが明らかになった。自己免疫疾患や難聴の責任遺伝子などが既に同定されており、疾患のメカニズム解明や治療法の開発に欠かせない情報が得られているという。9月7日に行われたワークショップ2「ヒトゲノム配列から遺伝子医学へ」では、慶応大学分子生物学の工藤純氏が、21番染色体のゲノム解読から得られた知見について解説した。

 ヒトゲノムの全貌を明らかにする−−。この共通目的の下に、国際ヒトゲノム計画がスタートしたのは1991年。1996年には国際ヒトゲノムシーケンス決定コンソーシアム(国際コンソーシアム)が結成され、日本、米国、英国、フランス、ドイツ、中国の6カ国が共同でゲノム解読を推進した。21番染色体は、日本の2グループ(理化学研究所と慶応大学)とドイツが解読を担当。昨年5月に解読を完了している。

 21番染色体はヒトの染色体の中で最も小さく、ダウン症の原因染色体として知られるほか、アルツハイマー病や白血病などの原因遺伝子が同染色体上に存在することがわかっている。工藤氏は、同氏らが解明に関与した2種類の疾患関連遺伝子について、これまでに得られた知見を紹介した。

 その一つが、自己免疫多発性内分泌腺障害(APECED)だ。常染色体劣性遺伝の極めてまれな遺伝性疾患で、自己免疫による様々な症状が現われるほか、カンジダ症など自己免疫というより免疫不全に起因すると思われる症状も併発する。フィンランドの研究グループが1994年に、この疾患の原因遺伝子が21番染色体上にあることを突き止め、慶応大学とフィンランド・ドイツの研究グループがそれぞれ独立に原因遺伝子を同定した。

 原因遺伝子のAIREは、遺伝子の転写調節を行っている自己免疫調節蛋白をコードするもの。主に胸腺とリンパ節で発現している。工藤氏らは、AIREを発現する細胞系(セルライン)の樹立に着手。現在、AIRE遺伝子のプロモーターを導入した遺伝子組み換えマウスの胸腺から、セルラインの樹立を進めているという。

 工藤氏らが原因遺伝子を解明したもう一つの疾患は、非症候群性難聴。この難聴は多遺伝子性疾患と考えられており、これまで30余りの関連遺伝子について染色体上の位置が同定、およそ10個の遺伝子配列が明らかにされている。うち、21番染色体上に、難聴に関与する「DFNB10」という領域があることが1996年に判明。難聴家系の連鎖解析から、この領域の「TMPRSS3」という遺伝子で、突然変異が患者にみられることがわかったという。

 TMPRSS3は、セリン・プロテアーゼとして働く膜蛋白をコードする遺伝子で、細胞内の小胞体(ER)に局在しており、他の蛋白のプロセッシング酵素として働いていると考えられている。ただし、TMPRSS3の発現は内耳など聴覚に関連する部位以外でもみられ、工藤氏は「おそらく内耳特異的に発現しているのは基質となる蛋白の方で、そのプロセッシング異常が難聴を引き起こすのではないか」と推測している。

 21番染色体上には、既知遺伝子153個のほか、配列からは遺伝子と推測されるが機能がわかっていない「新規遺伝子」も99個同定されている。工藤氏は最後に、「21番染色体上には躁鬱病の関連遺伝子があることもわかっており、近い将来、躁鬱病の遺伝子を解明したい」と結んだ。

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