2001.09.04

【ESC学会速報】 狭心症患者のQOL、高齢者でも侵襲的治療で改善−−TIME研究

 75歳を超える高齢の狭心症患者でも、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)など侵襲的な手段で積極的に治療した方が、薬物療法で保存的に治療するよりも生活の質(QOL)が向上する−−。9月3日のホットライン・セッションで発表された、「TIME研究」(Trial of Invasive vs. Medical therapy in Elderly patients with chronic CAD)でこのような結果が発表された。高齢の狭心症患者に対する再灌流療法の有用性を検討した臨床試験は初めてという。

 TIME研究の特徴は、第1評価項目を「生存率」ではなく「QOL」とした点だ。「75歳以上の高齢者では、余命をどれだけ延長する下よりも、余生をどれだけ享受できるかが重要」。研究を行ったスイスBasel大学病院のMatthias Pfisterer氏らは、理由をこう説明する。

 臨床試験の対象は、75歳以上の狭心症患者301人。平均年齢は約80歳で、4割強は女性だ。狭心症の重症度はCCS狭心症分類の2度以上で、抗狭心症薬を2剤以上服用している。Pfisterer氏らは、この対象患者を薬物治療群と積極治療群に無作為に割り付け、所定の治療を実施。6カ月間追跡してQOLなどを評価した。

 各治療群に対して行った介入は次の通り。薬物治療群(148人)には、脂質低下薬や抗凝固薬を含む抗狭心症薬を処方した。積極治療群(153人)には、薬物療法を行った上で、必要に応じてPCIまたは冠動脈バイパス術(CABG)を施行した。なお、直近10日間に心筋梗塞を発症した患者は、試験の対象から除外した。

 その結果、第1評価項目のQOLは、QOL評価によく用いられる2種類の質問票(SF36とDASI)のどちらで評価しても、積極治療群の方が薬物治療群よりも有意に改善していた。狭心症状の各指標も同様で、「心筋梗塞、急性冠症候群による入院」なしの生存率も、積極治療群で有意に高かった。これらから、Pfisterer氏らは「薬物治療抵抗性の高齢狭心症患者に対しても、可能であれば、若年者と同様に侵襲的再灌流療法を行うべき」と結論付けた。

 ただし、6カ月間の死亡率は、薬物治療群の4.1%に対して積極治療群では8.5%に達する。有意な差ではないが、そもそもこの症例数では検出力が不足しており、生存率に与える両群の影響は明らかではない。Pfisterer氏らが推奨する侵襲的な治療は、高齢者にとっては「余命と引き換えにQOL改善を図る」ものである可能性が否定できないわけだ。

 米国食品医薬品局(FDA)は、心不全、つまり心疾患の最終像であっても、余命を犠牲にしてQOLを改善するとの治療戦略は認めていない。また、QOLを改善するが生命予後を悪化する傾向があった経口強心薬は、欧州市場から撤退している。75歳以上であれば、本当に生命予後への影響を考慮しなくても良いのか−−。TIME研究の結果が果たして臨床現場に受け入れられるのか、今後の展開を見守りたい。(指方 通、医療ライター)


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