2001.09.02

片頭痛治療の経口薬、2剤が同薬価で同時発売

 片頭痛を適応症とするトリプタン系の経口薬2薬が、8月31日に発売された。一つはコハク酸スマトリプタン(商品名:イミグラン)で、わが国で昨年発売された注射薬と同じ成分。もう一つはゾルミトリプタン(商品名:ゾーミッグ)で、中枢移行性が高い「第2世代」のトリプタン系薬と位置付けられている。薬価はいずれも1錠1092.90円。わが国には糖尿病と匹敵する数の片頭痛患者がいるとされるが、大半は医療機関を受診しておらず、経口薬の同時発売で、潜在患者の受診が急速に進みそうだ。

 片頭痛は、激しい頭痛が月に1〜2回から週に1回以上、発作的に起こる慢性疾患。一度頭痛が起こると数時間から数日続くため、日常生活に大きな支障を及ぼす。わが国では15歳以上の人の8.4%、およそ800万人に片頭痛があるとされる。男女比はおよそ1対4で、年代的には20〜30歳代に多く、30歳代の女性では5人に一人が片頭痛に悩まされていると考えられている。

 片頭痛の原因には諸説があるが、頭蓋内の血管が過度に拡張し、周囲に炎症が起こることが要因の一つとされる。この過程には神経作動ペプチドのセロトニン(5-HT)が関与していると考えられており、セロトニン受容体は片頭痛治療薬開発のターゲットとされてきた。今回発売された2種のトリプタン系経口薬は、いずれも、5-HT1B/1D受容体の作動薬。従来薬と比べ、発作が起こってからの服用でも効果があるなどの利点から、片頭痛など血管性頭痛の第一選択薬となると見られている。

医師・患者双方への啓発活動がスタート、来年には新剤型も

 医薬品市場として捉えた場合、片頭痛には大きな特徴がある。それは、医師・患者双方の「頭痛は病院にかかるほどの病気ではない」との認識や、既存処方薬の切れ味不足などから、定期的に病院を受診している患者は数%程度と考えられている点だ。

 今回トリプタン系経口薬を発売する2社も、市場拡大の鍵の一つは「医師・患者双方への啓発活動」と見ている。コハク酸スマトリプタンを販売するグラクソ・スミスクラインは、8月から5カ月間、全国200カ所で医師向けの講演会を実施。同時に、市民公開講座(全国15カ所)やホームページ「ミグレッスン」での医療情報提供などを通して患者側への啓発活動も進める。

 一方のゾルミトリプタンを販売するアストラゼネカは、頭痛専門医やプライマリ・ケア医が参加する研究会「ADITUS Japan」をバックアップするほか、問診補助ツールの配布や、医師向けのシンポジウム、一般市民向けの頭痛啓発イベントなどを開催している。患者向けのイメージ広告も検討中だという。

 また、トリプタン系薬には、来年にも新たな剤型が登場する。グラクソ・スミスクラインは、コハク酸スマトリプタンの経鼻投与薬を承認申請しており、「経口薬よりも効果発現までの時間が短い」(グラクソ・スミスクライン広報部)との利点があるという。アストラゼネカも、水なしで服用できるチュアブル剤を承認申請している。こうした新剤型が登場すれば、片頭痛患者にとって、治療の選択の幅がますます広がりそうだ。

 なお、この2剤の作用機序は同じだが、中枢移行性などに違いがあり、生物学的利用率は第2世代のゾルミトリプタンの方が高い。ただし、どちらの薬剤を選ぶかは、患者によって違いがあるようだ。片頭痛患者100人にこの2薬を飲み比べてもらった試験では、患者の44%がゾルミトリプタン、29%がコハク酸スマトリプタンを選択し、残りはどちらでも同じと答えている(Headache;40,423,2000)。頭痛診療の第一人者、北里大学病院副院長の坂井文彦氏も「まずは2剤を患者さんに飲み比べてもらい、自覚症状がより軽くなる薬剤を自分で選んでもらう」との方針だという。

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