2001.08.18

【日本骨代謝学会速報】 スタチンの骨量増加作用、BMP-2とeNOSが関与−特別講演より

 高脂血症の治療薬として知られるHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)に、骨量の増加作用がある−−。動物実験でスタチンの骨量増加作用を実証した論文が、1999年にScience誌に掲載されて以来、スタチンは有力な骨粗鬆症治療薬候補として脚光を浴びている。高脂血症も骨粗鬆症も、高齢者が罹患しやすい疾患であり、「一つの薬剤が二つの効果を併せ持つ」ならば臨床的に大きな意義があるためだ。

 日本骨代謝学会は、今学会にこの論文の著者、米国Texas大学健康科学センターのGregory R. Mundy氏を招聘。同氏は8月10日に行われた特別講演で、スタチンの骨量増加作用の分子メカニズムに関する最新の知見を紹介した。

 骨量増加に作用する因子は、大きく二つに分けることができる。一つは、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)やインスリン様成長因子1(IGF-1)、線維芽細胞成長因子(FGF)のように、骨吸収を担う破骨細胞を死滅(アポトーシス)させ、骨形成を担う骨芽細胞を増殖させるもの。もう一つは、骨形成因子(BMP)に代表されるような、骨芽細胞を分化させ、骨マトリックスを成熟させるものだ。

 Mundy氏らは、げっ歯類を用いた動物実験で、スタチンがこのBMPを介して骨量を増加させることを実証した。マウスにBMP-2やFGF-1を投与すると骨量が増加するが、ロバスタチンを投与しても同様の骨量増加が見られる。一方、遺伝子組み換えでBMPの受容体の機能を失わせたマウスの場合、FGF-1では骨量が増加するがBMP-2では骨量が増えない。この組み換えマウスにロバスタチンを投与しても、骨量は増加しない。つまり、骨へのスタチンの作用はBMP-2と密接な関連があるというわけだ。

 また、この経路とは別に、一酸化窒素(NO)の合成酵素を介する骨量増加作用もあることがわかった。内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)は、NOを介した血管平滑筋の弛緩に関わる酵素。このeNOSの阻害剤を共存させると、スタチンの骨量増加作用が見られなくなるのだ。循環器分野の基礎研究から、スタチンにはeNOSを活性化する作用があることがわかり、コレステロール低下作用との相乗効果で心血管に保護的に働くと考えられている。この結果は、循環器と骨代謝との密接な関連を示すものと言えそうだ。

臨床的な効果については未確定、実証には無作為化試験が不可欠

 スタチンは既に、多くの高脂血症患者に処方されており、そのデータを用いて骨密度や骨折との関連を調べた臨床研究がなされている。Mundy氏によると、今年6月に発表されたメタ分析では、「スタチンの使用が骨密度を増加させ、腰椎や脊椎の骨折頻度を減らす」との結果が得られているという。一方、今年7月までに八つの観察研究が論文発表されたが、スタチンに骨量増加作用や骨折予防効果が「ない」とする論文もあり、明確な結論は出ていないとした。

 Mundy氏は、これらの研究はすべて、脂質について行われた臨床研究をレトロスペクティブ(後ろ向き)にみたものであり、スタチンの種類もロバスタチンやプラバスタチンなど早期に発売されたものに偏っていると指摘。また、現在発売されているスタチンは、コレステロール合成が行われる肝臓への移行性が高いものが選ばれており、骨など末梢への移行性は不十分だという。

 こうした点からMundy氏は「スタチンの骨に対する臨床的な効果を確認するためには、骨への移行性が高いスタチンを用い、骨粗鬆症患者を対象とした無作為化臨床試験が必要」と強調した。

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