2001.07.13

【日本DDS学会速報】 水溶性薬剤を徐放できるシリコン製デポ剤が開発、ワクチンへの応用も

 住友製薬製剤技術研究所の梶原匡子氏らは、ワクチンに用いる抗原やサイトカインなどの水溶性薬剤を、体内に徐々に放出できるデポ剤を開発した。女性ホルモンなど脂溶性の薬剤を放出するシリコン製デポ剤には既に商品化されているものがあるが、水溶性製剤を徐放するシリコン製剤は初めて。梶原氏らはこの研究結果を、7月13日のポスターセッションで発表した。

 梶原氏らが開発したシリコン製剤は、直径が1mm、長さが1cm程度の棒状のもの。一見すると、シャープペンシルの芯のように見える(写真)。これを、上腕の内側などの皮下に埋め込むことで、長期間に渡り安定的に薬剤が放出される。熱や有機溶媒を使わなくても調整でき、抗原ペプチドやアジュバント(免疫増感剤)などが変性する恐れがないのも、シリコン製剤の大きな特徴だ。 

 このシリコン製剤には、シリコンと薬剤を混合して調整した「マトリックス型」と、マトリックス製剤の外側をシリコンで包んだカバードロッド型」の2種類がある。皮下に埋め込むと、マトリックス型の場合は最初は大量に薬剤が放出され、時間の経過と共に放出量が減衰する。一方のカバードロッド型からは、常に一定量の薬剤が放出されるという特性がある。

 マウスやヒツジを用いた実験では、モデル抗原のアビジンを単独で投与した場合、抗体価の上昇はほとんど見られなかった。ところが、同じ量のアビジンをシリコン製剤化すると、抗体価の上昇が見られた。抗体価の上昇は、アジュバントとしてインターロイキン1β(IL1β)を一緒に製剤化した場合、さらに顕著になった。

 産生された抗体のアビディティー(多価の抗体が多価の抗原と結合する強さ)は、通常のワクチンを投与した場合よりも高かった。特に免疫グロブリンM(IgM)抗体は、他の免疫方法よりも早期から多量に産生されていた。梶原氏は「シリコン製剤には、より少量の抗体で効率良く抗体を誘導できるだけでなく、誘導された抗体の結合力が高い、つまり感染防御効果が高いという性質があると考えられる」と推測する。

 現在実用化されているワクチンには、1回の投与では十分に抗体価が上がらず、複数回の投与が必要になるものが多い。特に、生ワクチンから抗原部分だけを単離したコンポーネントワクチンは、安全性は高いものの抗体誘導能が低く、何度も接種しなければならない点が問題になっているという。梶原氏らは、このコンポーネントワクチンを単独、またはアジュバントと一緒にシリコン製剤化することで、単回投与で十分な抗体価が得られるワクチン製剤を実用化する予定だ。

 ただし、シリコン製剤であるため、投与すると体内にシリコンが残ることになる。この点は「単回投与で済む」というメリットとの兼ね合いになるが、梶原氏は「畜産家にとってワクチン接種は大きな労働負荷になっており、単回投与で済むメリットは大きい。家畜の可食部ではない部分に投与すれば、シリコンが体内に残ることに問題はないだろう。また、ペットの感染予防にも、何度も動物病院に通わなくて済むというメリットが評価されるのではないか」と述べている。

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