このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん
これから受ける治療に不妊症のリスクあり、今できることは?

<質問>

私はがん治療を受けることになっていますが、それによって不妊症になるリスクがあると医師に言われました。これからどうなるかはわかりませんが、夫も私も、妊娠の可能性を守るためにできる限りのことをするつもりです。また、実際に不妊症になった場合に備えて、今のうちにできることをしておきたいと思います。アドバイスをいただければ幸いです。

<回答者>Lindsay Nohr Beck氏、がんサバイバー

がん患者に生殖関連の情報提供とサポートを行っている全米規模の非営利団体「Fertile Hope」の創設者・理事、自身も20代で舌がん再発を経験

 すでに結婚されていてご主人の精子を使うことができるので、一般的に推奨される方法はがん治療の前に受精卵を凍結保存しておくことです。

 受精卵の凍結保存は、生殖能力の温存法として最も広く行われており、成功率も高い方法です。卵子と精子の両方を必要とするので、夫やパートナーのいる女性か、精子提供を受けることを望む女性に適した選択肢です。

 凍結保存の手順には通常、月経開始から2週間かかります。月経初日を1日目とし、2日目または3日目から10〜12日間ほど排卵誘発剤を使用して、複数の卵子を成熟させます。自己注射を行う方法もあります。並行して、血液検査や卵巣の超音波検査も行われます。この時期は、お腹が張る、不快感がある、気分が変わりやすいなどの症状が出ることがあります。月経前症候群(PMS)の症状が強くなったような状態と表現する人もいます。乳がんの人の場合は、これと同じようにホルモンを上昇させると有害な場合があるため、卵巣刺激の方法が異なることがあります。

 一般的に刺激開始から10〜12日後に卵子が成熟するので、軽い麻酔をかけ、吸引用の針を膣から卵巣へと挿入して卵子を取り出します(傷などの跡は残りません)。所要時間は10〜20分程度です。取り出した卵子を院内の設備で精子と受精させて胚をつくり、3〜5日間そのまま培養します。よい状態に成長した胚を凍結し、将来使うまで保存します。すべての胚が良好に成長するわけではないことは心に留めておいてください。

 凍結保存した胚を用いた妊娠の成功率は1つの胚あたり5%〜70%で、子宮には1から4個の胚が移植されます。ちなみに、自然な性行為による妊娠の確率は20%〜25%です。また、成功率は、以下のいくつかの因子で変わります。

●卵子採取時の年齢
●採取された卵子の数や状態
●凍結保存した胚の数や状態
●凍結時/使用時の胚の成長度
●不妊治療施設の経験や成功率

 胚はほぼ永久的に凍結保存でき、この方法により世界中で何千人もの赤ちゃんが生まれています。

 がん治療中の生殖能力温存については、治療の内容によっていくつか選択肢がある場合もあります。

 1つ目は性腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体(GnRHa)を投与して、化学療法の期間中、卵巣を一時的に休眠させるという方法です。まだ実験的な段階ですが、化学療法中に生殖能力を温存する方法として一部の研究者が提唱しています。薬は1カ月に1度(場合によっては3カ月に1度)、注射で投与されます。卵巣を休眠させ、身体を一時的に思春期前の状態にすることで、卵胞(卵子が育つ場所)へのダメージを減らせるのではないかといわれています。この方法を行う場合は、化学療法より1週間以上前に投与を開始し、以後は化学療法の期間中ずっと、月に1度投与を行うのが一般的です。

 GnRHaが有望な方法であるとする研究報告がいくつかある一方で、医学界には有効性を疑う声もあります。当初の報告の一部は研究内容に不備があり、比較対照を設けた小規模の試験では有効性が見出されませんでした。また、卵巣内の未成熟卵子はホルモン感受性でなく、したがってGnRHaのようなホルモン投与を行っても化学療法に対する保護作用はないと考えている専門家もいます。抗がん剤や放射線照射をきわめて大量に行った場合はGnRHaによる保護効果がないことが、研究によりはっきりと示されています。

 2つ目として、骨盤部に放射線治療を受けるのであれば、卵巣移動術が行えるかもしれません。これは、卵巣を骨盤領域から腹部に移動させて放射線の照射領域から外すというもので、非常に侵襲の少ない手技で行えます。ただし、化学療法からは守られるものではなく、卵巣への血液供給も損なわれる可能性があります。また、放射線が腹部に散乱して卵巣に当たることもあります。こうした要因のため、成功率は平均して50%程度しかありません。

 3つ目として、婦人科系のがんで手術を受けるのであれば、生殖能力を温存できる手術法がいくつかあります。ご自身にあった方法があるか、担当医と相談なさってください。

(監修:国立病院機構四国がんセンター 青儀 健二郎)

※編集部注釈
 現在、日本では、凍結保存しておいた杯を体内に戻す場合、原則1個、多くても2個までとなっています。その理由は、母体と胎児への負担の大きい多胎妊娠の可能性を避けるためです。

関連サイト
がん治療後の妊娠・出産のために

This discussion was originally presented on April 17, 2006 on www.plwc.org
この内容は、2006年4月17日に、米臨床腫瘍学会の患者向けサイト People Living With Cancer に掲載されたものです。

チームオンコロジー.Comは、患者さんと医療者、またご家族とのコミュニケーションの話題を中心に意見を交換する場(掲示板「チームオンコロジー」)を設けております。上記の内容について、ご質問ご意見がある場合は、この掲示板をご利用ください。

2008年1月29日