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乳がんの悪化につながらない妊孕性温存術はある?

<質問>

最近、エストロゲン受容体陽性の乳がんと診断されました。ホルモン投与を伴わない妊孕性の温存治療にはどのようなものがあるのでしょうか。

<回答者>Judith Shell氏、登録看護師・博士

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フロリダ州Osceolaがんセンター勤務、がん専門看護・がん専門上級看護資格取得、夫婦・家族療法のフロリダ州免許保持

 生殖能力に関して乳がんとほかのがんが違うのはホルモンに関する点です。一部の乳がんはホルモン感受性があり、したがって特定のホルモンにさらされると活発に増殖します。生殖能力を温存する一部の治療法や生殖補助医療、妊娠は、体内のホルモンに影響するため、乳がん患者さんの一部では関心がもたれています。

 すべての不妊治療でホルモンが投与されるわけではありませんが、受精卵や卵子を凍結保存する手技では通常、ホルモン投与が必要です。卵巣を刺激したり、成熟した卵子を取得するうえで、乳がん患者さんにとってより安全性の高い方法もいくつかあります。エストロゲン値が、標準的な卵巣刺激で使われるような高レベルにならずにすむ方法を以下に示します。これにより、ホルモンによって腫瘍細胞の増殖速度が上昇するリスクを減らすことができます。

自然の月経周期 その名のとおり、自然の月経周期で成熟した卵子だけを取得します。一般的に1カ月に1個の卵子が生じるので、この方法で取得できる卵子は1サイクルにつき1個です。卵子が取得できないケースや、一度に2個の卵子が取得できるケースもあります。この方法はホルモン投与を伴いません。

タモキシフェンの投与 エストロゲンが乳がんに作用するのを防ぐため、タモキシフェンの投与が多く用いられます。またタモキシフェンは、さまざまな投与量で不妊治療に使われることもあります。タモキシフェンは卵巣を刺激して、通常、一度に複数(多くの場合、1回の月経周期につき2個)の卵子を成熟させます。受精卵を少なくとも1個取得できる可能性は自然の月経周期の場合より高くなります。

 タモキシフェンと標準的なホルモンを組み合わせる新しい方法もあります。初期の研究結果によれば、この方法でよりたくさんの卵子が取得できるようです。いずれの方法もまだ研究段階で、安全性と有効性が確認されるにはさらに詳しい研究が必要です。

アロマターゼ阻害薬 アロマターゼ阻害薬とは、身体によるエストロゲン産生の一部を抑える薬です。通常の卵巣刺激法とアロマターゼ阻害薬を併用することで、最終的なエストロゲン値を低く抑え、腫瘍の増殖速度が上昇するリスクを減らすことができます。この方法によって一度に10〜12個という多数の卵子が取得されています。やはりまだ研究段階にある方法ですが、予備的試験においてがん再発率の上昇はありませんでした。妊娠中はアロマターゼ阻害薬を使用できません。不妊治療に用いる場合は、受精卵がこの薬に影響されるのを避けるため、卵子取得前に薬剤投与を停止します。薬剤は体内に2日間残留し、概ね1週間以内に血液中から排除されます。

卵巣組織の凍結保存 外来手術で、麻酔をかけて片方または両方の卵巣を取り出して凍結保存します。手術の所要時間は約1時間です。術前にホルモンやその他の薬剤を投与する必要はありません。取り出された卵巣は組織片に分割されますが、このとき、各組織片がホルモン産生細胞と未成熟卵子を含むように分割が行われます。この組織片を冷凍保存しておいて後に利用します。

未成熟卵子体外成熟(IVM) 卵子や受精卵の凍結保存では成熟卵子を取得しますが、IVMでは卵巣から未成熟卵子を取得します。そのため、不妊治療で使われる標準的な薬剤を投与する必要がありません。取得された未成熟卵子は、成熟するまで体内ではなく体外で培養され、その後、卵子として凍結保存するか、受精させて受精卵として凍結保存することができます。IVMは特定の不妊患者さん、特に多嚢胞卵巣症候群(PCOS)の患者さんで成果が上がっていますが、がん患者さんに関する研究報告はまだないため、がん患者さんでも有効かどうかを判断するのは困難です。がん患者さんの視点からみたこの方法のメリットは、卵子や受精卵の凍結保存と比べて短期間ですみ、薬も少なくて済むことです。ただ、体外成熟では、体内で自然に起こる成熟と比べて、卵子が胎芽に成長する可能性が非常に低くなります。

(監修:国立病院機構四国がんセンター 青儀 健二郎)

This discussion was originally presented on April 12, 2006 on www.plwc.org
この内容は、2006年4月12日に、米臨床腫瘍学会の患者向けサイト People Living With Cancer に掲載されたものです。

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2008年1月22日