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ストーマ(人工肛門)造設後のQOLは?

<質問>

親友の女性がステージ1の大腸がんと診断されました。医師には、肛門を温存した手術に化学療法と放射線治療を組み合わせることで90〜95%の成功率でがんを消滅できるが、ストーマ(人工肛門)造設術を行えば成功率は100%だと言われているそうです。オストメイト(ストーマを持つ人)の生活の質(QOL)について教えてください。

<回答者>Robert Mayer氏、医師

Dana-Farberがん研究所腫瘍内科・学術担当副責任者、Brigham and Women's病院上級医師、Massachusetts総合病院医師、Harvard大学医学部教授

 ご質問から判断すると、ご友人はステージ1の直腸がんで、がんが直腸の末端、つまり肛門機能に必要な筋肉である括約筋のすぐ近くにあるのだと思います。永久的なストーマ造設を伴う根治的手術以外の選択肢として化学療法と放射線治療を勧められているとのことですので、腫瘍が直腸内壁の最初の層(粘膜下層)を超えてそのすぐ下の筋肉(筋層)まで広がっているが、筋層を超えてはいないのだと思われます。

 このような腫瘍をT2病変といいます。腫瘍が粘膜下層にとどまっているのであれば(T1)、化学療法や放射線治療は勧められていないはずです。T2病変であることとその位置から、根治的な手術を行うには括約筋を犠牲にするのは避けられません。そこでその代わりとして、開腹せずに直腸内壁から原発腫瘍を直接切除する処置が取られるのです。そのような手技は、大腸手術に習熟した外科医であれば安全に行えます。これによって、多くの患者さんで括約筋を温存し、ストーマを造設せずにがんをコントロールすることができます。

 とはいえ、この問題を直接取り扱った数少ない臨床試験のデータに基づくと、成功率90〜95%というのはやや高めの数字かもしれません。たとえ腫瘍をすべて取りきれていても、腫瘍細胞がリンパ組織に侵入している場合や(リンパ管浸潤)、神経の周りの空間に侵入している場合は(神経周囲浸潤)、再発の可能性が高くなります。このような状態がみられるのであれば、手術で直腸を切除してストーマを造設するほうがよいでしょう。

 ストーマ造設術では、腸の末端を腹壁の表面から引き出す手術を行います。切除された肛門の代わりに、この腸末端の開口部(ストーマ)から便が排出されます。もちろん、ストーマの存在に慣れることは身体的にも社会的にも困難を伴いますが、たくさんの患者さんが適切な指導と励ましによってそれを乗り越えていらっしゃいます。

 ストーマを造設するのは、そうしなければ命に関わるがんを治すためだということを、患者さんが忘れないように気を配ってあげることが必要です。ストーマのケアには、周囲の皮膚に炎症が起きないように手入れすること、便を溜めるパウチを定期的に交換すること、便がスムーズに通過するようストーマの開口部を定期的に洗浄することなどが含まれますが、ほとんどの患者さんはこうしたケアを十分に行えるようになります。

 多くの医療機関が、ストーマのケアに習熟した看護師を配置しており、患者さんができるだけスムーズにストーマに慣れることができるよう、きめ細かな助言を行っています。まれに、パウチが外れて便が漏れてしまうこともありえますが、それは自然肛門を残したとしても腸の調子が悪いときには起こりえることです。私の受け持ちの患者さんにも直腸がんのためストーマを造設した人がいますが、こうした患者さんが身体的にも、社会的にも、そして性的にも充実した生活を維持していらっしゃることに驚嘆を覚えています。

(監修:岡山大学医学部 松岡 順治)

This discussion was originally presented on March 22, 2006 on www.plwc.org
この内容は、2006年3月22日に、米臨床腫瘍学会の患者向けサイト People Living With Cancer に掲載されたものです。

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2008年1月 8日