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進行性大腸がんの新しい治療法は?

<質問>

つい先ほど、「肝転移した大腸がん患者において肝臓への直接化学療法により生存率が向上する」というウェブサイトの記事を読みました。進行した大腸がんに対するそのほかの新しい治療法について教えてください。

<回答者>Robert Mayer氏、医師

Dana-Farberがん研究所腫瘍内科・学術担当副責任者、Brigham and Women's病院上級医師、Massachusetts総合病院医師、Harvard大学医学部教授

 10年ほど前まで、進行した(転移した)大腸がんに有効な治療法として知られていたのは、細胞分裂に必要な酵素の作用を阻害する抗がん剤フルオロウラシル(商品名「5-FU」)の単剤投与だけでした。そして、この治療法でも効果が得られた患者さんは少数にすぎませんでした。

 肝臓は、腹部(つまり大腸がんができる場所)からの血流やリンパ液を濾過するフィルターとして働いているため、大腸がんが最初に転移することが最も多い臓器です。がんが肝臓に転移した患者さんの大多数で、末梢血管(通常は腕や手)から5-FUを投与しても効果が得られなかったことから、がん研究者は、40年以上前から、肝動脈から直接肝臓に薬剤を注入するという方法を検討するようになりました。肝臓内の薬の濃度を高めることができれば、効果が得られる可能性が高いのではないかと考えたのです。

 この「局所化学療法」という概念は、手術で腹部の皮膚下に埋め込むポンプが開発されたことによって1980年頃に大きく進歩しました。ポンプは、チューブによって、肝臓に流入する動脈に接続されます。抗がん剤を定期的に装填すれば、入院せず外来診療で、数日間、場合によっては数週間も連続して肝臓に薬剤を流し続けることができます。この治療法を行った医療機関からは、がんが縮小する確率が高く、寿命が伸びる可能性もあるとして、データが熱心に報告されました。一方、懐疑的な研究者は、このような治療法は毒性が高くかつ高額であると指摘し、研究の対象となった患者が大多数の患者と異なるのではないか(例えば、大多数の患者を代表するような被験者ではなかったなど)と疑問を投げかけました。

 2006年2月に、米国立がん研究所がスポンサーとなり複数の医療機関の患者を対象とした無作為化臨床試験の結果が、ASCOの専門誌Clinical Oncology誌に報告されました。この試験では、肝転移がある(ただし他の部位には転移がない)大腸がん患者で、それまで治療を受けていない人を対象とし、本人の同意を得たうえで、5-FUを肝臓に直接注入する群と末梢静脈に注入する群に無作為に分けました。

 その結果、局所化学療法は末梢静脈投与と比べて、がんが縮小する率も肝転移をコントロールできる率も高く、ひいては寿命がいくぶん長く、生活の質(QOL)も高いことがはっきり示されました。その一方で、局所化学療法を受けた人は肺などの臓器に転移が生じる率も高いことがわかりました。

 肝臓をターゲットにした局所化学療法はこれらの臓器に十分効果を発揮できないからだと考えられます。厳密に実施されたこの臨床試験において、局所化学療法は肝転移のある大腸がんを治癒することはできませんでしたが、有効性がありかつ患者さんが耐容できるものであることが示されました。

 しかし、局所化学療法を引き続き取り入れているがんセンターはごく一部です。というのも、この臨床試験は10年以上前に計画されたもので、その後、イリノテカンやオキサリプラチンといった抗がん剤、セツキシマブ(商品名「アービタックス」、国内申請中)やベバシズマブ(商品名「アバスチン」)といった分子標的薬などの新しい治療法が登場しているからです。こうした新しい薬剤による治療成績は、5-FUによる局所化学療法の治療成績を上回っています。新しい薬剤と局所化学療法の組合せによって相乗効果が得られるかどうかは、今後の研究が待たれるところです。

(監修:岡山大学医学部 松岡 順治)

This discussion was originally presented on March 22, 2006 on www.plwc.org
この内容は、2006年3月22日に、米臨床腫瘍学会の患者向けサイト People Living With Cancer に掲載されたものです。

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2008年1月 8日