肝がんとともに

肝がんと診断された方へ

肝がんの検査

  わが国の肝がんは、大多数が肝炎ウイルスの感染によって起こっています。つまり、ウイルス性肝炎の患者は、肝がんになる危険性が高いと言えるわけです。そのため、肝炎の患者には、定期的な経過観察が求められています(「肝がんの病因とは」参照)。

 中でも、ウイルス性肝炎の進行した肝硬変は、肝がんの超高危険群です。肝がんの危険因子としてはこのほか、肝硬変、高齢、アルコール摂取、糖尿病などの生活習慣病なども知られており、これらの因子を持つ場合にも、肝がんの危険群となります。

 経過観察のために行う検査には、血液検査と、超音波検査、CT検査、MRI検査といった各画像診断検査が挙げられます。以下に、検査の詳細を紹介しましょう。日本肝臓学会が発行している「肝癌診療ガイドライン」では、超高危険群に対し、肝細胞がんを早期発見するために、3〜4カ月ごとの超音波検査と血液検査を行うよう勧めています。

 また、がんの大きさが1cm以下のときには、超音波検査だけで見つけることは困難です。そのため、超高危険群にあてはまる場合には、半年から1年に1回はCT検査、あるいはMRI検査を同時に受けるよう勧められます。

血液検査
超音波検査
CT・MRI検査
針生検


■血液検査

 血液検査では、血液を採取し、肝がんがあると数値が上昇してくる特定の物質(腫瘍マーカー)を測定します。わが国では、肝がんの腫瘍マーカーとして、AFP(アルファ・フェト・プロテイン)、AFP-L3分画、PIVKA-II(ピブカ・トゥー)の3種類が保険診療で使用が認められています。

 AFP値が20ng/mLを超えている場合はAFP-L3分画を測定します。AFL-L3分画の値が15%を超える場合は、肝細胞がんが存在する可能性が高いとされています。また、AFP-L3分画が15%以下であっても、AFPの測定間隔を3カ月以内にすることが推奨されています。

 2種類のマーカーを測定するといった工夫によって感度が向上してきましたが、小さな肝細胞がんでは数値が上昇しないこともあり、またほかの肝障害によって数値が上昇し、偽陽性になってしまうこともあります。このため、通常は以下の画像診断と組み合わせて検査を行います。

 AFP値が持続的に上昇、あるいは200ng/L以上の上昇、PIVKA-IIの40mAU/mL以上の上昇、AFP-L3分画の15%以上の上昇を認めた場合、超音波検査で腫瘍が検出されなくても、以下に示すCTあるいはMRIによる検査を行うことを考慮するように、「肝癌診療ガイドライン」では求めています。

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■超音波検査

 超音波検査は、肌の上から超音波を当てて肝臓から返ってくる反射の様子を画像化し、肝臓の状態を非侵襲的に調べる検査です。がんの直径が1cm以上ある場合、高率に異常な陰影として捉えることができます。身体にかかる負担が少ないため、広く行われる検査法ですが、見えにくい部位があることも知られています。

 最近、超音波検査で、新しい造影剤(商品名「ソナゾイド」)が使用できるようになりました。ソナゾイドは、非常に小さな気泡状の造影剤で、超音波を当てると、ソナゾイドを含む領域がより鮮やかに造影されます。さらに、正常な肝臓組織にだけ取り込まれる性質があるため、がんを見つけやすくなりました。

 ただし、この造影剤を使った超音波検査は、従来の超音波検査装置では行うことができません。造影に対応した専用の装置を使う必要があります。

 なお、肝がんの治療法の1つであるラジオ波焼灼療法(「ラジオ波焼灼療法」参照)では、がんを凝固させるために針を差し込みます。この際、がんのある部位を正確に把握するために、ソナゾイドを使った超音波検査を行いながら、ラジオ波焼灼療法を行う医療機関も出てきています。

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■CT・MRI検査

 CT(コンピューター断層撮影)検査は、全身にX線を当てて検査を行います。確定診断のために、最も多く用いられている検査法です。CT検査でも、病変部をより詳しく見るために、造影剤を使うことが必要です。また、MRI(磁気共鳴画像)検査は、磁場に反応する造影剤を静脈内に注射し、MRI装置で測定します。

 CT・MRI検査では、ダイナミックCT、ダイナミックMRIと呼ばれる方法が主流となってきています。ダイナミック法とは、造影剤を注入後、時間をかけて造影剤の血管内への広がり方を追う方法です。これは、がんと正常な組織で、血流が異なることを利用した検査法です。

 がんは、その増殖に多くの栄養が必要です。このため、がんの周囲は正常組織よりも動脈血流が豊富です。ダイナミック法では、最初に動脈血流の多い腫瘍組織が描出されます。その後、造影剤は徐々に正常組織へと広がっていきます。正常組織に造影剤が移行するにつれて、腫瘍からは造影剤が少なくなり、描出されにくくなります。最初に腫瘍だけが描出された画像と、時間がたって正常組織だけが描出された画像を比較することで、より正確な診断が可能になってきました。

 CT検査は、検査時間が5〜10分で済むというメリットがありますが、X線を使うため、子供や妊娠の可能性がある女性などには不向きです。また、ヨード系造影剤を使用する方法は、アレルギーがある場合には使えません。ダイナミックCTで肝細胞がんの確定診断はほぼ可能ですが、鑑別が難しい場合には、MRI検査や入院した上での血管造影検査が必要となる場合があります。

 MRI検査は、画像の精度が高いことや放射線被曝がないことなどのメリットがありますが、検査時間が30分ほどかかることと、磁力を使うために心臓ペースメーカーを装着している方は使えないなどというデメリットがあります。また、ガドリニウム系造影剤に対するアレルギーがある方は受けられません。

 MRI検査用の造影剤には、磁性を持った酸化鉄であるSPIO製剤もあります。SPIO製剤は肝臓の正常な組織にだけ取り込まれる性質を持っており、がんとの鑑別が容易になりました。SPIO製剤を使用したMRI検査(SPIO-MRI)は、通常のMRI検査では確定診断が難しい場合などに行われます。ただし、肝機能が低下していると、SPIO製剤が取り込まれにくいため、鑑別が難しいこともあります。

 最近、MRI検査用の新しい薬剤(商品名「プリモビスト」)が開発されました。ダイナミックMRIで使用する造影剤に、SPIO製剤と同じ肝臓の正常組織のみに取り込まれる性質を持たせたものです。この造影剤を使うことで、1回の検査でより多くの情報が得られるようになりました。

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■針生検

 画像診断では診断が確定できなかった場合、針生検を行うことがあります。針生検とは、体の外からがんと疑われる部分に細い針を刺して、がんと疑われる部分の組織を採取し、顕微鏡で組織を観察することです。超音波検査でしか見つからない、小さな病変の確定診断に適しています。

 組織を見れば、がんかどうかが分かりますが、針に付いたがん細胞が別の組織に広がってしまう可能性があること、出血の可能性があることなどから、針生検を行う場合は、本当に必要かどうかを事前によく検討する必要があります。

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