肝がんとともに

肝がんと診断された方へ

肝がんの分類とそれに応じた治療法

 肝がんの治療法は、手術やラジオ波などによる局所治療、化学療法などさまざまです。肝がんの患者は、がんに加えて、慢性肝疾患にもかかっている点が、ほかのがんとは異なる点です。このため、患者の年齢や全身状態、肝臓の状態(肝機能)、がんの大きさや個数、がんがある場所、進行度などを踏まえて、最も効果的で、患者にかかる負担の少ない治療法を選択することになります。

 治療方針を決めるためには、まず肝がんの状態を正確に把握する必要があります。画像診断の結果や血液検査の結果を基に、肝がんの進行具合と、患者の肝障害度を、以下の分類法によって評価します。この2つは、治療後の予後に大きくかかわってきます。

ステージ分類とは
肝障害度分類とは
Child-Pugh分類とは
肝がんの進行度別の治療アルゴリズム
5年生存率について


■ステージ分類とは

 肝がん自体の進行度は、ステージ分類(病期、進行度分類ともいいます)で評価します。肝がんの進行度は、ステージ1からステージ4まで、4つの段階に分かれています。ステージを決める要因は、以下の①から③を満たすかどうかで決まります(表1)。

 リンパ節への転移があり、肝臓以外の臓器への転移(遠隔転移)がない場合にはステージ4-A、遠隔転移がある場合にはステージ4-Bと診断されます。これらはTNMステージ分類と呼ばれています。

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■肝障害度分類とは

 肝臓の機能は、日本肝癌研究会が「原発性肝癌取扱い規約」でまとめた肝障害度分類で評価します。AからCの3段階で、肝障害の強さを示します(表 2)。各項目の重症度を求め、2項目以上があてはまる肝障害度に分類します。また、2項目以上があてはまる肝障害度が複数あった場合には、より高い肝障害度に分類することになります。


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■Child-Pugh分類とは

 なお、欧米では肝障害度評価として、Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類を使用しています。各項目のポイントを加算し、合計点によってA(5〜6点)、B(7〜9点)、C(10〜15点)の3段階に分類を行います(表3)。


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■肝がんの進行度別の治療アルゴリズム

 このように、肝がんおよび肝臓の状態を把握した後、治療法を選択します。「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2009年版」で肝細胞がんの治療アルゴリズムをまとめていますが、その後、新たに分子標的薬の登場や他の知見が得られたことから、日本肝臓学会は新しい肝細胞がん治療アルゴリズム2010を発表しています(図1)。

図1 日本肝臓学会提唱のコンセンサスに基づく肝細胞癌治療アルゴリズム2010(出典:肝癌診療マニュアル第2版 医学書院)
(*クリックすると拡大表示されます)


 これまでのアルゴリズムと2010年版のアルゴリズムで大きく異なるのは、脈管浸潤のありなし、肝外転移のありなし、の2つを治療を選ぶ上での条件としてアルゴリズムの表に盛り込んだことです。

 これまでは、脈管浸潤(=脈管侵襲ともいいます。血管に癌が浸潤していること)や肝外転移(=肝外病変ともいいます。肝臓以外に癌が転移していること)がある場合は、アルゴリズムとは別途に記載され、「脈管侵襲を有する肝障害度Aの症例では肝切除が選択される場合がある」とされていました。また、肝外転移については、「肝外転移を有する症例では化学療法が選択される場合がある」とされていました。

 2010年版のアルゴリズムでは、肝外病変がある場合、Child-Pugh Aであれば分子標的薬であるソラフェニブが第一選択となり、Child-Pugh B/Cであれば緩和治療ということになりました。また、肝外病変がないが、脈管浸潤がある場合、動注化学療法、ソラフェニブ、肝動脈化学塞栓療法、肝切除が選択肢として推奨されることになりました。特に、主要門脈腫瘍栓(Vp3、Vp4)の場合は動注化学療法かソラフェニブが、本幹腫瘍栓(Vp1、Vp2)の場合はTACEや肝切除も推奨されています。こうした肝外病変や脈管浸潤が条件に盛り込むことができるようになった背景には、全身化学療法として新たにソラフェニブが登場し、肝外病変例や脈管浸潤例に有効であることが示されていることが背景の1つにあります。

 それぞれの治療法については、「肝がんの治療を受ける方へ」を参照してください。

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■5年生存率について

 なお、がん診療においては、「5年生存率」という言葉があります。がんの治療を始めた人のうち、治療開始から5年後に生存している人の割合のことで、治療効果の目安となる数字と位置づけられています。

 日本肝癌研究会の「第18回全国原発性肝癌追跡調査報告」(2004-2005)によれば、肝細胞がんの5年生存率は、急激に高まっています。第5回〜第8回の追跡調査報告では5年生存率はわずか9.5%でしたが、第9回〜第13回の追跡調査報告では26.8%、第14回〜第18回追跡調査では37.9%と大幅に高まっています。しかし、5年生存率そのものはあまり高い数字とは言えないのが現状でしょう。

 ただし、個々のがんの大きさや個数、さらに元の肝機能の悪化程度によって、選択できる治療法は異なり、それに伴って生存率も大きく変化します。現在の主治医に、自分の肝がんで選択できる治療法とその生存率について、尋ねてみるのもよいでしょう。

 また、同じ調査報告によれば、治療後2年以内に、肝臓内の再発が約3割起こるという結果が示されています。残っている肝臓の機能をできるだけ維持しながら、効果的な治療を選択することが重要です。

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