肝がんとともに

化学療法について

最新の分子標的薬の臨床研究結果

 ソラフェニブは、現在、進行肝細胞がんに対して使用できる唯一の分子標的薬です。今では、国内外で使用経験が積み重ねられてきていますが、最近使用可能になっている新しい抗がん剤(分子標的薬など)と同様に、どういった状態の患者さんに使用するとどういった効果が得られるのか、ということをさらに詳細に解明していく必要がありました。

 そこで実施された臨床研究が、GIDEON研究と呼ばれるものです。正式名称は、「Global Investigation of therapeutic DEcision in hepatocellular carcinoma and Of its treatment with sorafeNib」といいます。

 この研究では、切除不能な肝細胞癌(HCC:Hepatocellular Cell Carcinoma)に対するソラフェニブの、日常臨床における安全性および有効性について、世界的な規模で調査を行っています。

 GIDEON研究には、39カ国から3000人を超える患者が登録されています。日本からも40の施設が参加し、日本人患者さんが数多く登録されました。この研究は現在終了し、2013年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で結果が発表されました。

 このGIDEON研究の最終解析結果を要約しますと、肝機能を示す指標であるChild Pugh分類において、投与開始時の肝機能が中程度低下しているChild Pugh分類B(7〜9点)の症例では、肝機能が良好なChild Pugh分類A(5〜6点)の症例と比較して、ソラフェニブの投与期間が短く、重篤な有害事象の発現が多い、というものでした。また、全生存期間(OS)中央値は、Child Pugh分類Aの患者グループは、13.6カ月だったのに対し、Child Pugh分類Bの患者グループでは5.2カ月でした。

 これらの結果から言えるのは、まずソラフェニブを安全に使用するには、肝機能が低下していないほど良いだろうと考えられることです。そして、Child Pugh分類Bの患者においては、全体的な安全性はChild Pugh分類Aの患者と比べて大きくは変わらないものの、重篤な有害事象が発現する可能性は高いことから、ソラフェニブの使用は慎重に検討する必要があり、積極的に推奨されるものではないということです。

 GIDEON研究に登録された日本人患者の結果については、2013年の肝癌研究会で報告されました。

 GIDEON研究に登録された日本人患者は合計517人でした。このうち、安全性評価の対象(1回でも評価された患者)となったのは508人で、最終的な解析が行われたのは500人でした。Child Pugh分類Aの患者は432人、Child Pugh分類Bの患者は58人でした。

 ソラフェニブを投与開始する際の用量(1日量)が800mgだったのはChild Pugh分類Aのグループ、Child Pugh分類Bのグループともに約半数弱で、400mgだったのが約半数でした。GIDEON研究全体では、800mgで開始できた患者が約7割だったので、海外と日本人では体格などの違いにより差が認められた可能性が考えられます。

 日本人におけるソラフェニブ投与期間は、Child Pugh分類Aのグループが17.4週、Child Pugh分類Bのグループが7.6週で、Child Pugh分類Bのグループの方が投与期間が短い傾向にありました。また、有害事象の発現頻度、および副作用の頻度はChild Pugh分類AのグループとChild Pugh分類Bのグループの間で同等と考えられましたが、重篤な有害事象や副作用、投与中止に至る有害事象の頻度はChild Pugh分類Bのグループの方が高い傾向にありました。

 OS中央値は、Child Pugh分類Aのグループが17.6カ月、Child Pugh分類Bのグループが4.9カ月で、Child Pugh分類Aのグループの方が長い傾向にありました。

 これらのことは、Child Pugh分類Bの患者においては、治療によって得られるベネフィットとリスクを慎重に考慮した上でソラフェニブ投与の可否を検討すべきと考えられる結果です。

 なお、ソラフェニブが肝細胞がんの適応で承認される際の根拠となったフェーズ3試験であるSHARP試験は、対象者の95%がChild Pugh分類Aの患者さん(ソラフェニブ割付群において)でした。

 日本肝臓学会がまとめている「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」においても、ソラフェニブの対象は肝機能がChild-Pugh分類Aの症例であるとしています。

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