山形TIAは症状が一過性であることから軽視される傾向がありますが、発作初期からの治療は非常に重要で、その後の継続治療が予後に影響することから、決して軽視してはならない病態です。本日お集まりいただいたメンバーも参加しているのですが、倉敷市の協力を得て、実施している倉敷市脳卒中予防対策事業について、井口先生からご紹介いただけますでしょうか。
井口 倉敷市脳卒中予防対策事業では、2009年3月より市内の脳卒中対応病院(10施設)に入院した発症7日以内の急性期脳血管障害例を前向きに登録しています。2010年2月までの1年間に登録された急性期脳血管障害1,088例の内訳は、脳梗塞704例(65%)、脳出血232例(21%)、くも膜下出血67例(6%)、TIA 79例(7%)、その他6例(1%)でした。わが国の人口モデルで補正したところ、倉敷市では10万人あたり151人が脳卒中を発症していることがわかりました。また、脳梗塞やTIAの発症数は加齢とともに増加し、脳出血は40歳代、60歳代で増加する傾向が示されました。TIAは79例と症例数が少ないのですが、男性がやや多く、男女比は脳梗塞とほとんど変わりません。
 これまで報告されているTIAの有病率は2.3%、欧米における発症率は10万人あたり37~110人ですが、今回の調査では10万人あたり5.9人と、欧米に比べて著しく少ないことがわかりました。10万人あたりの脳卒中/TIA発症率を世界と比較すると低収入国では117人、高収入国では94人ですが、倉敷市では61人と少なく、脳梗塞に関しても同様の傾向がみられます(図1)。TIAの発症率は脳梗塞と同等あるいは若干低くなる程度と考えられますが、倉敷市では10万人あたり6人と著しく低く、この数字の背景にはさまざまな問題が隠れていると思われます。救急車搬送率をみると、くも膜下出血では80%以上、脳出血では70%以上でしたが、脳梗塞、TIAでは40%程度とそれほど高くありませんでした。一方、発症から3時間未満の早期来院率は、脳梗塞28%、TIA54%と、TIAでは半数以上が早期に来院していることがわかりました。心房細動の保有率は、脳梗塞では17%、TIAでは13%でした。入院後の再発率は、脳梗塞では4%、TIAでは3%とほとんど差は認められませんでした。
山形確かに海外データとかなり異なりますね。わが国における脳梗塞病型別の発症率推移との比較をお願いいたします。
定政久山町研究の第1集団(1961~1973年)、第2集団(1974~1986年)、第3集団(1988~2000年)における脳梗塞病型の年次推移をみますと、ラクナ梗塞が減少する一方でアテローム血栓性脳梗塞や心原性脳梗塞は増加し、第3集団(男性)ではラクナ梗塞は40.0%、アテローム血栓性脳梗塞は31.7%、心原性脳梗塞は28.3%でした。さらに、この数十年間に脳梗塞の病態は変わってきた可能性があります。倉敷市における脳梗塞病型別の割合も、ほぼ一致する結果となっておりましたが、今回、TIAの割合が少ないので驚きました。
高尾1999年~2000年にわが国で実施された多施設共同脳梗塞登録調査(J-MUSIC研究)や、脳卒中データバンク2009(JSSRS2009)における急性期脳卒中の種類別頻度をみてもTIAは7%程度ですから、TIAで受診する割合が低いという問題は、わが国に共通した課題だと思います。
木村欧米のデータには入院例に限らず、かかりつけ医を外来受診したケースも含まれていると思います。われわれが行っている倉敷市脳卒中予防対策事業は、対象を入院患者に限定していますから、外来受診のみの患者さんは含まれていません。実際には医療機関を受診したものの入院していないTIAの患者さんは多いのではないでしょうか。今後は外来受診のみで帰宅された患者さんを適切にケアしていくことが重要だと考えています。
山形そのためには、患者さんやかかりつけ医に対して、TIAが非常に重要な病態であることを啓発する必要がありますね。
 
1ページ目へ
2ページ目へ
3ページ目へ
次のページへ

プラビックスの詳細は添付文書をご覧ください。

Copyright © 2005-2011 sanofi-aventis K.K. All rights reserved.