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日本脳神経外科学会 第68回学術総会 ランチョンセミナー
京王プラザホテル

 糖尿病患者では、「健康寿命」が男女とも約15年短いこと、また50〜75%の患者が心血管イベントにより死亡していることが報告されており、糖尿病に合併する血管障害が患者QOLおよび生命予後に多大な影響を及ぼしている。糖尿病患者が依然増加し続けるなか、糖尿病血管障害の克服は早急に対応すべき重要な課題と言える。2009年10月16日に京王プラザホテルで開催された日本脳神経外科学会 第68回学術総会ランチョンセミナーにおいて、久留米大学の山岸昌一氏は糖尿病血管障害のメカニズムについて “高血糖の記憶(Metabolic Memory)”という視点から解説を行い、2型糖尿病の治療の考え方および第三世代SU薬グリメピリド(アマリール®)の有用性についても言及した。座長は、東京医科歯科大学の大野喜久郎氏が務めた。

座長:東京医科歯科大学 脳神経機能外科 教授 大野 喜久郎氏
演者:久留米大学 医学部糖尿病性血管合併症病態・治療学 教授 山岸 昌一氏

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糖尿病血管障害の鍵を握る
“Metabolic Memory”
-早期からの厳格な血糖コントロールの重要性が明らかに-

 近年、糖尿病に伴う血管障害メカニズムを解く鍵として『高血糖の記憶(Metabolic Memory)』に注目が集まっている。Metabolic Memoryとは、“過去にどのくらいの高血糖に、どの程度の期間曝露されたか(diabetic exposure)が、その後の糖尿病血管合併症の進展を左右する”という概念である。
 山岸氏は、ヒトにおけるMetabolic Memoryの存在を示唆した大規模研究としてDCCT(Diabetes Control and Complications Trial)/EDIC(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications)およびUKPDS (United Kingdom Prospective Diabetes Study)33 /UKPDS 80を紹介した。
 DCCT/EDICは、1型糖尿病を対象に、合併症抑制における厳格な血糖コントロールの意義を検証した試験である。DCCTにおける6.5年間の追跡により、強化療法群で細小血管障害の有意な抑制効果が確認され、試験終了後、さらに追跡を続けたEDICでは11年後に細小血管障害とともに大血管障害の発症も有意に抑えられることが示された(DCCT/EDIC Study Research Group: N Engl J Med 353: 2643-53, 2005)。
 一方、UKPDSは2型糖尿病患者を対象に、厳格な血糖コントロールの意義を検証した試験である。UKPDS 33では強化療法による大血管障害抑制効果に有意差が認められなかったが、その後の追跡調査UKPDS 80において、細小血管障害の進展リスク低下に加え、心筋梗塞(p=0.01)や死亡(p=0.007)に関しても有意なリスク低下が確認された(Log-Rank test、Holman RR et al.: N Engl J Med 359(15), 1577-1589, 2008)。同研究では、こうした初期の良好な血糖コントロールによりその利益が継続する、つまり遺産的効果が得られるという意味でLegacy Effectという表現が用いられた。血糖の記憶という点で、Metabolic MemoryとLegacy Effectは同じ現象と考えることができる。
 山岸氏は、「1型糖尿病、2型糖尿病いずれにおいてもMetabolic Memoryという現象が存在することが示唆された。高血糖が記憶されないよう、可能な限り早期から介入を行うことが重要で、それが最終的に細小血管障害、大血管障害の両方の抑制につながる」と述べた。

血糖の記憶のメカニズムを説明できる物質
“AGEs(終末糖化産物)”

 では、なぜMetabolic MemoryあるいはLegacy Effectという現象が起こるのか。山岸氏は、これらの現象を最もよく説明できる物質としてAGEs(Advanced Glycation End Products : 終末糖化産物)をあげた。
 AGEsは、還元糖から形成されるが、そのプロセスはおよそ次のとおりである(図1)。
 高血糖が持続している状況下では、生体内のタンパク質が糖化されやすい状態にあり、グルコースなどの還元糖はタンパク質と非酵素的に反応してシッフ塩基、さらにアマドリ化合物が形成される。これらの反応はいずれも可逆的である。そして、さらに高血糖状態が持続すると、アマドリ化合物の一部がAGEsを形成する経路へと進む。この反応は不可逆的で、いったんAGEsが形成されると後戻りはできない。ちなみに、グリコアルブミンやHbA1cはアマドリ化合物であり、AGEsの前駆物質と言える。つまり、可逆的な反応の段階で形成されるため、血糖値を下げれば低下するなど、血糖値に応じて変動する。山岸氏は、「AGEsは高血糖が記憶された結果であり、いったんAGEsが形成されると、AGEsを減少させることはできない。これは、喫煙の害を思い浮かべると理解しやすい。つまり、喫煙歴はその後の肺癌リスクと関連し、後から禁煙しても簡単には非喫煙者と同レベルにリスクが低下しない。これと同様の現象が糖尿病の血管合併症でもみられるのである」と述べた。

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サノフィ・アベンティス株式会社