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EBMによる脳卒中治療Update -脳神経血管内治療からみたガイドラインのあり方 -


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桑山2009年、「脳卒中治療ガイドライン」の改訂版が刊行されました。前回のガイドライン公表(2004年)から5年ぶりの改訂です。この5年間、脳血管障害の治療にはいくつかの大きな変化があり、今回の改訂にも反映されています。本日はそれらに焦点を当て、ガイドラインの概要を見ていきたいと思います。

脳動脈瘤に対する血管内治療

表1 脳動脈瘤治療─治療法の選択 表2 血管内治療の種類と方法

●脳動脈瘤治療─血管内治療

桑山まず私たち脳神経血管内治療を行う立場として脳動脈瘤の治療について見ていきたいと思います。

松本今回の改訂では、クモ膜下出血における血管内治療の位置づけに変化がありました。非常に重要なポイントです。脳動脈瘤の治療法の選択として、破裂脳動脈瘤では開頭による外科的治療あるいは開頭を要しない血管内治療が「グレードA(行うよう強く勧められる)」で推奨されているのは2004年版と同様ですが(表1)、脳動脈瘤の部位、形状、大きさからみて可能と判断される場合には「瘤内塞栓術を施行する」が「グレードC1(行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠がない)」から「グレードB(行うよう勧められる)」に引き上げられました(表2)

 推奨グレード引き上げの根拠となっているのは、ISAT(International Subarachnoid Aneurysm Trial)の結果です。2005年の報告(Molyneux AJ et al : Lancet 366, 809-817, 2005)では、術後1年間の結果は血管内コイル塞栓術群の250/1063例(23.5%)が死亡または要介助であったのに対し、外科的クリッピング治療群では326/1055例(30.9%)で、その絶対的リスク減少は7.4%(95%信頼区間 3.6-11.2、p=0.0001)でした。血管内コイル塞栓術にみられた生存率に対する早期の効果は7年後まで維持され、有意でした(p=0.03、log rank検定)。

桑山先生の施設では、破裂脳動脈瘤に対するクリッピング術とコイル塞栓術をどのように使い分けられているのでしょうか。

松本かつてはクリッピング術を優先していたのですが、2007年途中からコイル塞栓術を第一に検討するようになりました。クリッピング施行側と一緒に適応を検討しており、年齢やその他のリスクなどを総合的に考えて決定するようにしています。

桑山コイル塞栓術には、血栓症という合併症リスクがありますね。

松本術中の血栓症に関しては、抗凝固療法を併用して予防しています。抗血小板薬は、破裂脳動脈瘤の場合、術翌日から開始が原則です。しかし、コイル表面に血栓形成を認めるような患者では、術中でも抗血小板薬を経鼻胃管経由で投与しています。

桑山破裂脳動脈瘤に対する抗血小板薬のエビデンスは確立されているのでしょうか。

松本信頼に足るデータはありません。そのため新ガイドラインでも、「治療前後の抗凝固・抗血小板療法については過剰な血栓化による塞栓性合併症を予防するためにその必要性は認識されているものの標準的な方法として広く容認されているものはない」と記すにとどまっています。なお、周術期の抗血小板療法についての言及は、旧ガイドラインにはありませんでした。

桑山脳動脈瘤の治療に関するガイドラインの推奨を吉村先生と田中先生はどう受け止めていらっしゃいますか。

吉村評価したいと思います。最近ではISAT(International Subarachnoid Aneurysm Trial)の長期成績も報告され(Molyneux AJ et al : Lancet Neurol 8, 427-433, 2009)、5年後の生存率が血管内治療群で有意に高いと報告されています。今回のガイドラインの改訂を受けて、今後は血管内治療がますます活用されていくと考えています。

田中瘤内塞栓術の推奨グレードがBに格上げされたことは本治療の日本での普及に追い風になると思われます。欧州・北米でのトレンドを見ても今後脳動脈瘤治療に占める血管内手術の比重が高くなっていくことに異論はないでしょう。

●未破裂脳動脈瘤の治療

桑山未破裂の脳動脈瘤についてはいかがでしょうか。

松本新ガイドラインはその点について、新たな項目を起こしています。未破裂脳動脈瘤が発見された場合の初期対応として、まず強調されているのは患者さんへのインフォームドコンセントとカウンセリングです。治療に関しては表3のように記されています。具体的な治療方法には言及されていません。

桑山「治療しない」という選択肢もあるのですね。

松本もちろんです。私たちの施設では、未破裂脳動脈瘤の患者さんには「治療しないという選択肢もある」旨を最初に伝えています。

桑山未破裂脳動脈瘤にコイル塞栓術を行う場合、血栓症対策はどうすべきでしょうか。

松本この点もガイドラインには記載がありません。しかし未破裂脳動脈瘤に対するコイル塞栓術で最も多い合併症は、術中破裂ではなく術中・術後の血栓塞栓症だと言われています。ですから術中の抗凝固療法は有用と思われます。また、破裂していないので、抗血小板薬による出血リスク増加は考えられません。そうなると術中・術後だけでなく術前からの抗血小板薬も有用である可能性があります。エビデンスを待ちたいと思います。また、「自然歴の把握」も重要です。どのような未破裂脳動脈瘤で出血リスクが高いのか、これが分かれば治療すべき脳動脈瘤もおのずから明らかになるはずだからです。

桑山未破裂の脳動脈瘤に対して、吉村先生と田中先生はどのような方針をとっていらっしゃいますか。

吉村私たちも未破裂脳動脈瘤においては治療の有効性に関する十分なデータがないことをまず説明しています。その上で、脳動脈瘤のサイズと部位から想定される破裂率と、経過観察、クリッピング術、コイル塞栓術の3つの選択肢を示して、個別にじっくり相談しながら選ぶようにしています。

田中SAHの家族歴のある例などを除けば、治療適応は70歳以下で、前方循環だと7mm以上、後方循環だと5~7mm以上で手術を考慮します。経過観察する場合は可能な限り高解像度なMRIや3D-CTで瘤の形状を評価し、未破裂瘤を抱える患者さんの精神的ケアにも留意して外来診察しております。

表3 未破裂脳動脈瘤の治療
 
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