RRAS抑制を介した厳格な降圧と脳・心保護の機序
ミカルディスの大規模臨床試験ONTARGET

ミカルディスはAT1受容体遮断作用に加えて、選択的PPARγ活性化作用を有しており、強力な降圧効果を発揮して臓器保護に好影響を及ぼすと考えられる。現在、このミカルディスが心血管イベント発症にどのような影響を及ぼすかを検討する大規模臨床試験ONTARGETプログラムが進行中である。そこで本日は、ARBの作用機序を、AT1受容体遮断だけでなくAT2受容体刺激、血管系だけではなく血球系と、幅広い視点で研究されてきた松原弘明先生をお招きし、ARBとACE阻害薬が臓器保護に及ぼす影響、ONTARGETプログラムに寄せる期待などについてお話を伺った。

松原 弘明 氏
京都府立医科大学大学院医学研究科
循環器内科学教授

 

ミカルディスはAT1受容体を遮断して血圧を強力に抑制する

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ミカルディスは、AT1受容体に対する解離半減期が長く、血中半減期も長いことから、長時間にわたり強力かつ安定して降圧効果を発揮すると考えられます。海外で行われた他のARBとの無作為化比較対照試験では、ミカルディスの降圧効果は服用後18時間以降においても持続し、ミカルディス群の血圧値は対照群に比べて有意に低くコントロールされていることが示されました(図1)。
また最近では、ミカルディスはAT1受容体遮断作用に加えて、選択的PPARγ活性化作用を有することが報告されています。

 
 図1 ミカルディスの収縮期血圧降下度(MICADO試験)

ARBはマクロファージの動脈硬化層への遊走を阻害して動脈硬化を抑制する

 
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RAS抑制薬の有用性、可能性について、作用メカニズムの観点からお話を伺います。

 
【松原】

これまで、AT1受容体の発現が最も多いのは血管平滑筋と考えられていましたが、実は単球・マクロファージにはさらに多くのAT1受容体が発現しています。そして、ARBを投与すると単球・マクロファージの機能が抑制され、動脈硬化層への遊走が抑制されることがわかってきました(図2)。さらにARBは、骨髄における造血系幹細胞の単球への分化・増殖も特異的に抑制することが示唆されました。こうした血球系に対する作用の違いは、ARBとACE阻害薬を区別する薬理学的な大きな違いになると思います。また、ARBはACE阻害薬よりも動脈硬化や血管系合併症の抑制に関しては優位ではないかと思っています。心筋のリモデリングそのものに関してはACE阻害薬とARBは同等かも知れません。しかし、心血管系に関しては血球への作用や、AT2 受容体への刺激作用などを考慮するとARBの方が優れていると思います。

 
 図2 ARBによる単球・マクロファージの機能抑制
 

ミカルディスのONTARGET試験に期待する

 
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ONTARGET試験のどのような点に注目されていますか。

 
【松原】

まず、ラミプリルと比較している点が注目されます。ラミプリルはHOPE試験で優れた心血管イベント抑制効果が実証されていますから、ラミプリルと比較して同等性が証明されるだけでもすごいことだと思っています。さらに3万人というARB史上最大規模で検討を行っていますから、ミカルディスの臨床的有用性について十分なエビデンスが得られると期待しています。
エンドポイントについては、日本では脳卒中の方が心筋梗塞よりも約3倍多いですから、脳卒中の抑制効果がACE阻害薬を上回ってくれることを期待しています。心臓においては、ARBよりもACE阻害薬のほうがNO産生能は強いだろうと考えられます。しかし、心筋梗塞の発症は冠動脈の動脈硬化を経て起こります。私は動脈硬化の抑制に関してはARBの方が強いと思っていますから、それを含めてプラークを安定化させ、血栓が生じないような状態にできるのはARBの方だと思っています。

 
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ONTARGET試験の結果が、日本の高血圧治療にどのような影響を及ぼすと考えられますか。

 
【松原】

ミカルディスは従来のARBと一線を画す薬剤だと思っています。強力なAT1受容体遮断作用に加えて、PPARγ活性化作用を有していますから、特に代謝や炎症系に対する影響は大きいと考えられます。心血管障害、代謝障害、肥満、メタボリックシンドロームを合併した症例では、炎症を抑えることによって合併症はさらに抑制されると考えられます。ONTARGET試験によってミカルディスは、そうしたエビデンスを有する唯一のARBとなる可能性があると思っております。