超高齢社会を迎えた日本が抱える課題に「患者さんにやさしい」をキーワードにソリューションを提供

常に「患者中心」を貫き、幅広いテクノロジーを活用して高齢化社会へのソリューションを創出

GEヘルスケア・ジャパンが日本に根をおろして30年。現在、healthymagination(ヘルシーマジネーション)を日本で実現するための戦略、Silver to Goldに全力で取り組んでいる。高齢化社会へのソリューションをどのように生み出し、日本の医療を変えていくのか? そのための3本の柱「ケア・エリア」「プライマリ・ケア」「ヘルスケアIT」はそれぞれどのように動き、どう連携しているのか? GEヘルスケア・ジャパンの他社にはない特徴と今後目指していくものとは? 10月23日に開催されるhealthymagination day 2012に先がけて、川上社長にインタビューを行った。

高齢化社会へのソリューションを生み出す3本の柱とは?

――GEが取り組むhealthymagination(ヘルシーマジネーション)と日本での戦略であるSilver to Goldについてお聞かせください。

川上 潤(かわかみ じゅん)
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
代表取締役社長兼CEO

GEは2009年に「世界で最も困難な課題」の1つとされる医療分野における諸課題をイノベーションによって解決することを目的として、healthymaginationを開始しました。具体的には2015年までに60億ドルを投じて100のイノベーションを実現。医療に関するコスト、アクセス、クオリティを改善しようというものです。Silver to Goldは、このhealthymaginationを日本において実現するための戦略です。日本の超高齢社会に対するソリューション(解決策)を提供することを成長の機会とし、ヘルスケアの分野でイノベーションを起こすことで高齢化社会(Silver)を黄金時代(Gold)にすることを目指しています。私たちは3年ほど前からSilver to Goldに取り組み、Talker(評論家)ではなくDoer(実践者)として活動してきました。現在、徐々にその成果が出始めています。

日本はグローバルのGEの中で、高齢化社会に対するソリューションを創る上でのCOE(Center of Excellence:中核的な役割を果たす拠点)になっています。世界で最初に超高齢社会となった日本において、そのためのソリューションやモデルを開発し、海外に発信することは、今後高齢社会となる欧州諸国や中国をはじめ、世界に対する貢献になると考えています。

――日本が直面している医療の諸問題に、どのように対応していますか?

当社は次の3つにフォーカスしています。

1つ目は高齢化によって特に重要になってくる疾患領域(ケア・エリア)へのフォーカスです。高齢化社会になると慢性的な病気が増加し、患者さんはその病気と長くつきあっていくことになります。そのような病気に対する理解を深め、早期に発見し、早期に治療することは非常に重要です。中でも、現在、私たちが注力しているのが肝臓疾患とアルツハイマー病です。肝臓疾患はウイルス性肝炎を中心にアジアに多く、GE内で日本は肝臓疾患に対するソリューションを創るCOEにもなっています。当社では先日、MRエラストグラフィ技術を使って非侵襲的に肝臓の硬さが測定できる新製品を発表しました。この技術によって線維化の進行の程度がわかります。こうした診断における進歩に加えて、今後はさらに線維化の根本にある細胞の動きへの理解を深めていきます。そこには画像診断だけでなくライフサイエンス的なアプローチも活用します。線維化の状態を正確に理解、モニターする技術を私たちが創り、その技術を使って肝臓の線維化そのものを制御する治療薬などを製薬会社が創り出すことができれば、肝臓疾患に関する大きなブレイクスルーが生まれるでしょう。

アルツハイマー病に関しても肝臓疾患と構図は同じです。病気を引き起こすとされているアミロイドという物質の脳内蓄積の程度を検出する薬剤と画像診断技術を当社が開発することで、アミロイドの蓄積そのものをコントロールする治療薬の開発を加速することが可能です。私たちは、製薬会社による治療薬創りに必要不可欠な存在になっていくでしょう。

2つ目がプライマリ・ケアです。私たちが考えるプライマリ・ケアとは、患者さんに最初に接する「かかりつけ」の医師が往診や在宅医療も含めた地域コミュニティ全体の健康状態に継続的な責任を持つと同時に、そうした医師がより高いテクノロジーを活用し、より専門性を持った医師、さらには看護師、保健師、介護士などとつながることで、地域の医療資源を最大限に活用できる体制をつくることだと考えています。医療が患者さんに「近づく」ということ、さまざまな職種や医療機関、施設が「つながる」ということがキーワードです。

日本では風邪をひいても大きな基幹病院に行き、長時間待って5分だけ診療を受けるという傾向があります。しかしこれからさらに高齢者が増えていくと、もはやそういう形ではやっていけない。高齢者の病院へのアクセスも問題ですし、医師不足も深刻。国民医療費の増大にも拍車がかかります。そこで、産官学と力を合わせて、「近づく」「つながる」をキーワードとした日本型のプライマリ・ケアをつくろうとしています。

そこにはテクノロジーが重要な役割を果たします。私たちはいつでもどこでも使えるポケットサイズの超音波診断装置など、プライマリ・ケアに必要な機器の開発とともに、プライマリ・ケアに携わる医師の方々にとって必要な情報がすぐに得られるポータルサイトの構築や教育コンテンツの提供に取り組んでいます。そうした活動によって日本型プライマリ・ケアの確立に貢献していきます。

3つ目がヘルスケアITです。病院と病院、病院と診療所をITを利用してつなぐのはもちろんですが、データ連携をさらに実現する上でクラウドの利用が有効であると考えています。2010年の法令改正で医用データを病院の外部で保存できるようになったことを受け、クラウドを利用した「医知の蔵」という画像データセンターのサービスの提供を開始しています。

 国民医療費の抑制はさしせまった問題です。問題の解決には新しいテクノロジーを導入し、飛躍的に生産性を向上させることが必要です。ITはそのために特に必要なテクノロジーであり、医療機関の連携をクラウドを用いて実現することは、問題解決の糸口になると考えています。

――ケア・エリア、プライマリ・ケア、ヘルスケアITはそれぞれどのように関連し、協働しているのですか?

従来、当社はどちらかというと製品や技術ごとのビジネスを行ってきました。CTです、MRIです、超音波診断装置です、というように。しかしそうした製品群に横串を刺し、横断的にビジネスを展開しないとSilver to Goldは実現できません。例えば肝臓疾患の場合、CTやMRI、超音波や造影剤などさまざまなものが必要です。これら製品群を横断的に見て、結びつける。プライマリ・ケアでも超音波診断装置だけが求められているわけではないし、教育コンテンツだけが必要なわけでもありません。日本型のプライマリ・ケア構築に必要な総合的なソリューションと技術を提供するという視点が必要です。ヘルスケアITにおいても、最終的には医療の「標準化」につながるような臨床上の意思決定支援ができるような仕組みづくりが今後の医療分野におけるITの大きな役割になると考えています。単にクラウドの技術だけをプッシュすればよいということではありません。臨床上の価値を創り出すこと、そのために製品横断的、技術横断的に横串を刺して、より使いやすく価値の高いソリューションを提供することが、最終的には患者さんのベネフィットになると思います。

ヘルスケアの未来を幅広く議論するhealthymagination day 2012

――10月23日に開催されるhealthymagination day 2012について教えてください。

私たちが過去3年間ほど取り組んできたSilver to Goldの具体的な進捗、見えてきたこと、これからの方向性について、産官学のオピニオンリーダーの方々を招いて議論します。また、これからの時代を担う医学生、技術系の学生さんにも議論に加わっていただきます。

当社は今年創立30周年を迎えました。そういう意味で、これまで我々がやってきたことの集大成であり、これからの30年を考えることでもあります。当日の内容はソーシャルメディアで配信する予定です。開かれた環境の中で、日本の医療の今後を議論していきたいですね。

――GEヘルスケア・ジャパンはグローバルなヘルスケア企業として唯一、日本国内に、開発・製造・流通・サービスを一貫して持っています。そのことがもたらすメリットとは?

やはり「横串」が刺せることに尽きます。例えば開発・製造の責任者が拠点を回り、現場の社員やお客様の生の声を聞くという取り組みを行っています。そこで得られた情報は素早く社内で共有されます。このように日本のお客様のニーズ、先生方のニーズ、患者さんのニーズをグローバルな規模での開発や製造につなげたり、新しいアイデアやビジネスモデルを生み出すために活用できることが最大の強みだと考えています。「In Japan For Global」(IJFG)という戦略の下、日本発の製品やアイデアを世界に発信していくことを特に重視しています。開発・製造・流通・サービスを一貫して持っているからこそ、IJFGが可能なのです。

製品のIJFGの例としては、64列の最高級の機能と品質を備えていながら、日本の技術でコンパクト化、省エネ化、使いやすさを実現したCT装置があります。この製品は世界中でベストセラーになっています。こうした製品のIJFGに加えて、今後は新しいビジネスモデルやアイデア、さまざまな技術を組み合わせたソリューションのIJFGを推進していきたいと思っています。

――医療機器メーカーからヘルスケア・カンパニーになることの意味とは?

当社は2009年に社名をGE横河メディカルシステムからGEヘルスケア・ジャパンに変更しました。メディカルシステムというと医療機器メーカー、CTやMRIや超音波診断装置などを扱うメーカーということです。しかしへルスケアというと、そうした機器類だけではなく、幅広いヘルスケア・ニーズに対応する会社ということになります。また、ヘルスケアの市場は今後大きく伸びることが期待できる成長市場でもあります。当社はコアビジネスである画像診断における強みを活用しながら、ライフサイエンス、バイオ、造影剤、IT、プライマリ・ケア、在宅医療などを通して、幅広いヘルスケア・ニーズに対応していきます。そしてお客様やパートナー企業と協力しながら新しいソリューションを生み出し、当社自身もヘルスケア市場の中で大きく成長していきます。

「患者さんのために」というスタンス自ら考え、行動する社員の力を結集

――今後、どのような会社を目指していきますか?

当社が日本に根をおろした30年前から一貫して目指してきたのは「患者さんのために」ということでした。医療機器メーカーならまず第一に病院経営者や医師の方を向いているのが自然かもしれませんが、私たちは会社設立当初から患者さん第一を社是としてきました。

当社では、主に消費財分野で用いられるオブザベーショナル・サーベイという手法を医療機器市場に持ち込みました。これは、一日中CTやMRIの検査室にカメラを据えて撮影を行い、その映像を分析することで、患者さんがどんなところに苦労したり、不便を感じているかを知ることができます。そこから得られた情報を活かして開発された機器は、患者さんにはもちろん、検査を担当する技師の方々にも大きなメリットをもたらします。そして患者さんのメリットになることが、検査を実施する病院の業務効率化や医療の質の向上にもつながり、他院との差別化など病院にとってのメリットにもなると考えています。

当社では、社員一人ひとりがさまざまな課題を自分事として考え、行動する組織になることを目指しています。現在、当社内では創立30周年を記念して、若手社員を中心に今後のヘルスケアにおいてやるべきことを自発的に考え、実行するプロジェクトを行っています。こうしたプロジェクトを通じて、社員もSilver to Goldとはどういうことか、ヘルスケア・カンパニーになるとはどういうことか深く理解することができます。社員みんなが「自分事として考え、行動すること」を実践してくれているのが心強いですね。

当社はこれからの30年も、患者さんのことを第一に考え、幅広いテクノロジー、自ら考え行動する社員の力を結集して、超高齢社会における医療のイノベーションを起こしていきます。

(プロフィール)

川上 潤(かわかみ じゅん)
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
代表取締役社長兼CEO

1963年生まれ。87年東京大学経済学部 卒業、日本ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン株式会社入社。94年ノースウェスタン大学 MBA取得。97年日本ゼネラル・エレクトリック株式会社 企画開発部長。99年GEエンジンサービス 北アジア地域統括 ゼネラルマネージャー。2000年日本ゼネラル・エレクトリック株式会社 取締役、日本GEエンジンサービス株式会社 取締役。03年GEメディカルシステム・インターナショナル アジア サービス セールス&マーケティング ゼネラルマネージャー。04年GE横河メディカルシステム(現:GEヘルスケア・ジャパン)常務取締役 サービス統括本部長。11年6月より現職。

コンテンツ

  • healthymagination day 2012レビュー
  • 社長インタビュー
  • ケア・エリア
  • プライマリ・ケア
  • ヘルスケアIT

INDEX

  • 高齢化社会へのソリューションを生み出す3本の柱とは?
  • ヘルスケアの未来を幅広く議論するhealthymagination day 2012
  • 「患者さんのために」というスタンス自ら考え、行動する社員の力を結集