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2007.07.02 日経ビジネス特別版「がんの診断と治療」より
 

 恵佑会札幌病院では1981年の開設以来、一貫してがん医療に取り組んできた。一般診療も行うが、患者の9割はがん患者だ。中でも得意とするのが消化器系のがんで、手術の症例数では食道がんが全国3位、大腸がんでは全国6位を誇る。特に食道がんには多様な治療法があるが、同病院ではそれらに幅広く対応できるため、他の医療機関からの紹介も多い。新規の食道がん患者は、道内で年に500〜550人ほどだが、そのうち300人近くがここを受診している。

 恵佑会札幌病院が目指すのは、ごく初期のがんの診断から、治療、再発、末期がんに至るまで、がんをトータルで診ていくこと。
 「診断なら診断、治療なら治療と、部分的にしか患者と関わらない日本のがん医療に、昔から疑問を感じていた」と理事長で院長の細川正夫氏。「ひとりのがん患者をずっと診ていきたい」というのは、細川氏の開設当初からの変わらぬ思いだ。

精密検査としてPET/CTを利用

 恵佑会札幌病院では2005年末に、PET/CT(フィリップス製)1台を設置した。読影にあたるのは、放射線画像センター所長の伊藤和夫氏。フィリップス製のPET/CT装置は、安定した画像が得られやすく、読影がしやすいという。
 現在では1日に約10名ほどの検査を行う。検診コースは特に設けておらず、ほとんどががんの精密検査に用いられている。手術前のがんの広がりや転移、術後の再発の確認に利用されるケースが多い。
 この他、細川氏や伊藤氏らが特に高く評価するのが、放射線や抗がん剤で治療を行った場合の再発診断である。これらの治療では、腫瘍そのものは形を残していることが多いが、がん細胞が活動性を失っていれば、PETの画像では集積が見られない。反対に集積が認められれば、がん細胞が再び息を吹き返し、活動を開始したと考えられるため、ただちに次の治療を検討する必要がある。PET/CTによりCTの「形」の情報と、PETによる細胞の「代謝、活動性」の情報を総合することで、この見極めがより確実になる。

PET/CTをより知るため 症例検討会を立ち上げ

 細川氏はPET/CTの有効性を認めながらも、「PET/CTを使った診断は発展途上。信頼できる部分と、まだよく分からない部分がある」とあくまで慎重だ。実際、類似した症例でも、PETの画像にがんが写ったり写らなかったりするケースがあるという。
 今年4月、伊藤氏らが中心となって「白石PET/CT症例検討会」を立ち上げた。近隣の医療機関の医師にも参加してもらい、月に一度 ディスカッションを行う。PET/CTの啓蒙、啓発という意味合いもあるが、このような地道な研究を重ねることで、PET/CTの“まだよく分からない部分”を明らかにし、診断率の向上を図ることがねらいだ。
 PET/CTはがん診療における頼れる武器のひとつ。でも一方で、それがどこまで役に立つのか、その限界を把握した上で利用する必要がある。これが全国有数のがん専門病院を誇る、恵佑会札幌病院の基本姿勢だ。