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2007.07.02 日経ビジネス特別版「がんの診断と治療」より
 

 複十字病院にPET/CT装置「biograph LSO」(シーメンス製)が設置されたのは、2005年秋。がん診療における医療レベルを向上させ、周辺の医療機関との差別化を図る、というのが主な導入理由である。

 東京都清瀬市は、もともと結核の療養所が集まっていた地域だ。その名残で、この辺りには今でも、400床前後の病院が数多く点在する。同病院は1947年、ここに「結核研究所」の臨床部として発足。長く日本の結核医療をけん引してきた。そして今、呼吸器、消化器、乳腺領域を中心とするがん病院に、生まれ変わろうとしている。がん診療に有用なPET/CTの導入を決めたのには、このような背景がある。

 PET薬剤はデリバリー方式を選択した。「サイクロトロンの設置は不可能」との判断から、いったんはPETの導入そのものをあきらめかけたが、2005年9月に日本メジフィジックスが、デリバリーによるPET薬剤の供給を開始したことで道が開けた。 医療技術部副部長・核医学科長の安藤博美氏は「デリバリーによってPET/CTを導入できたことで、当院の診療レベルは確実に上がった。病院側の収益は決して高くないが、この付加価値は非常に大きい」と話す。

診療部門との密な連携が強み

 診断は核医学の専門医である飯塚友道氏と、非常勤の医師2人で行う。診断の確度をより高めるため、検査結果を医師2人でダブルチェックしている。また通常、PET検査の撮影範囲は鼻の下あたりを上限とすることが多いが、ここでは飯塚氏の方針で、脳を含めた画像を撮っている。神経内科医として認知症の診断にも取り組む飯塚氏によると、「PETはアルツハイマー病の早期発見に大変有効」だという。撮影時間は多少長くなるが、がんの検査でPETを受けた人に、偶然、早期のアルツハイマー病が見つかることも少なくないそうだ。
 診療科との連携が取りやすい点も、院内に検査部門と診療部門を持つ同病院の強みだろう。ここでは治療にあたる医師が、PET検査室を訪ねることも珍しくない。検査報告書だけのやりとりと比べ、モニターで実際に患者のPET画像を見ながら、治療医と診断医がディスカッションできるメリットは計り知れない。

 同病院では、PETによるがん検診にも力を入れる。コースは約9万〜16万円の全4コース。万が一、がんが見つかった場合にも、速やかに治療へと移行できるので、より安心だ。

蓄積した1500の症例を検証中

 がんは一筋縄ではいかない病気だ。予想もつかない場所に転移をすることもある。そういうがんに対して、全身を一度にスクリーニングできるPET検査を、飯塚氏らは高く評価している。 ただしPETによる診断は、まだ確立したものではない。導入を検討していた時も、そんな懸念の声は聞かれた。
 「確立されていないからこそ、やりたい。PETは患者さんにとって、もっと有用な検査になる可能性もある」と飯塚氏。これまでに蓄積した症例はおよそ1500例。中にはPETの教科書には載っていない、驚くような発見がいくつもあった。それらを整理して、近々、公表する予定だ。