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2007.07.02 日経ビジネス特別版「がんの診断と治療」より
 

 子規、漱石の作品や道後温泉で知られる四国の中心都市・松山。四国がんセンターは、その中心部、松山城の堀之内に長く立地していた。建物の老朽化などもあって、昨年春には市内郊外に移転。面目を一新し、広々としてモダンな建物内で、新しく診療を開始している。
 もともと四国を代表するがん専門病院として知られ、県外から来院する患者も多い。特に有名なのは乳がんで、愛媛県の乳がん手術の8割は、この病院で行われるという。堀之内にあった時代から、女性用のがんドックというユニークな検診サービスも行っていた。

四国でもトップクラスの稼動率

 移転を機に、2006年5月から導入されたのがPET/CTである。放射線科専門医、核医学認定医、PET核医学認定医という肩書きを持つ放射線科の井上武氏は、その背景をこう説明してくれる。
「最近まで、愛媛県内にはPET施設がなかったので、必要な場合は県外の医療施設へ検査を委託していました。福岡とか岡山に、患者さんに自費で行っていただき、検査を受けてもらっていました。これが度重なってきたので、臨床科の各科の医師の間からも、うちにはPETが必要との声が上がってきました」
 機器選定に当たっては、CTの性能が良かったことから東芝メディカルシステムズのPET/CTに決めた。 かなりのニーズはあるという読みはあったが、予想通り、2台導入したPET/CTはほぼフル稼働の状態だ。平均して1台につき1日に10人が検査を受けるので、1日に20人。年間にすると5000人前後のPET検査をこなす。この稼働率は四国でもトップクラスだという。

 保険適用のがん(頭頸部がん、肺がん、乳がん、食道がん、転移性肝がん、婦人科がん、悪性リンパ腫、原発不明がんなど)のほとんどの患者は、まずPET/CTを撮る。乳がんの手術前には手術を前提にしてCTを撮り、切除範囲を決めて行くが、転移が疑われる浸潤がんなどの場合は、再度PET検査を行う。短時間で全身を検査できるPETの利点を生かして、転移があるかどうかの最終チェックを行っているのだ。

PETならおとなしいがんも見分けられる

 「がんを1カ所持っている患者は、2カ所、3カ所に同時にがんを持っていることがしばしばあります。PETは全身を撮れますし、それぞれのがんの悪性度を見られるので、そうした多重がんの患者の治療計画を立てる際に、非常に有効性が高い。例えば、胃がんと肺がんが同時に見つかったとすると、一方のがんはまだおとなしいから、様子を見ようといった手術の優先順位の判断もできます」

 核医学認定医として約15年というキャリアを持つ井上氏ならば、PET画像から、進行の遅い、いわばおとなしいがんを見分けることも可能だという。また、PET検査のおかげで、予期しなかった部分にがんが見つかることも少なくない。

 「つい最近も、肺がんの疑いでPET検査をしたら、どうやら肺がんではないらしいと分かった。その診断のついでに全身を見ていて、直腸がんが見つかったというケースもありました」
 四国がんセンターは、地域の医療機関との連携にも力を入れている。がん看護専門看護師、医療相談員、臨床心理士ら5名の専任スタッフを抱える「がん相談支援・情報センター」が設置され、医療相談、退院調整、在宅療養支援などを行っているが、地域の医療機関から、PET検査の相談や依頼も受け付けている。松山周辺の市民は、身近なかかりつけ医の紹介で、手軽にPET検査を受けることができるのだ。