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2007.07.02 日経ビジネス特別版「がんの診断と治療」より
 

 大阪府済生会中津病院は1916年創立。昨年(2006年)、90周年を迎えた。全国に79を数える済生会病院の中でも病床数778は最多であり、大阪府下の地域中核病院としての知名度は高い。付属施設であるPETセンターは、同病院の大規模整備を目標とした「済生会中津病院第二次整備計画」の一環として、2005年1月にオープンした。

Delayed Scanと特徴ある読影レポート

 PETセンター長の岡村光英氏は、「PETは、腫瘍の糖代謝を反映した画像診断で、がんの検出、病期診断、治療効果判定、転移・再発診断に有用です。昨年8月からは、PET/CTを導入。PETとCTの『融合画像』が得られることで、より正確な部位診断が可能になりました」と語る。同センターのPET/CT装置は、島津製作所の「エミネンス・ソフィア」。岡村氏は「この装置は、他機種に比べて“撮影の時間が短い”“被曝量が少ない”“PET画像が金属アーチファクトの影響を受けにくい”などの特徴がある」と評価している。2005年1年間の検査総数は2452件、2006年は2612件。1日あたり12〜14名の患者さんを岡村氏と大学の後輩の読影医である小澤望美氏の2人(共に核医学・放射線科専門医)でダブルチェックしている。

 同センターの検査法や読影には2つの特徴がある。その1は、Delayed Scanといって、PET検査を行った1時間後に再度PET/CTで検査することである。その理由は、「ほとんどの腫瘍は、PET薬剤注入後1時間よりも2時間後の方が、PET薬剤の集積が増加する傾向があるため」だ。より正確な画像診断をするために、1回目のPET検査にDelayed(遅れて)して、1時間後のPET/CT検査を、できるだけルーティンに実施している。検査時間が長くなり、検査効率は下がるが、より高い診断精度を得ることを目指すからである。2つ目の特徴は、その読影レポートにある。同センターでは、読影レポートの中に診断の鍵となった画像と説明を貼り付け、より参照しやすい形で記録している。“見てすぐ分かる”ことで“画像による診断の根拠を示し”、その結果、“PET検査の有用性の理解の輪を広げる”ことがその目的。同センターの読影レポートはすでに6000症例を超え、婦人科、呼吸器科などに分類すれば、症例集としての出版も可能なほどである。

患者の命を救ったPET検査の効用

 日々PET検査を行うことで、患者の生死の別れ目に遭遇することもある。6月初旬、1年前に大腸がんの手術をし、その再発・転移診断で同センターを受診した60歳代の女性患者。問診で「歩くとふらつく。左右のバランスが悪い」との訴えがあった。全身のPETを撮ってみると脳の集積が左右非対称。もしやと思い、通常の検査では行わない頭部CTを撮ったところ、脳の片側に硬膜下血腫があった。隣接する済生会中津病院脳外科に連絡して、4時間後に緊急手術をし、その患者は一命を取り留めた。岡村氏は語る。「私共のセンターは、臨床とがん検診の比率が9:1。より臨床に特化していることで、がん以外の病気の可能性を察知して対応できました。PET施設も救急救命の一翼を担っていることを再認識した出来事でした」。