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2006.06.26 日経ビジネス特別版「がんの診断と治療」より
 

 倉敷というと、モネの「睡蓮」やエル・グレコの「受胎告知」を収蔵している大原美術館が有名だ。倉敷中央病院は、その大原美術館を建てた倉敷紡績社長・大原孫三郎氏によって、1923年(大正12年)に設立された。「治療本位」「病院くさくない明るい病院」「東洋一の理想的な病院」という3つの理念を掲げ、倉紡の社員だけでなく一般の市民の診療も行った。 そして現在、倉敷中央病院はベッド数1116床、医師313名、看護師980名を擁する岡山県西部圏域(80万人)を代表する大病院の一つとなっている。

着実な歩みを目指して

 2006年2月には、放射線センターRI検査室にPET/CT検査装置を導入し、最新の核医学検査を開始した。PET検査施設導入の経緯について、放射線科主任部長・渡邊祐司氏は次のように語る。
 「PET検査施設の構想自体は3年前からありましたが、当院はあえてPETフィーバーが冷めるのを待って導入しました。PET検査装置を導入するからには、中途半端はダメ。将来をにらんで着実な歩みをしたいと考え、コスト、スペース、装置の進歩の問題を充分時間をかけて検討しました。まずコストについては事務部門の応援も得て、この地域での需要を軸に装置台数、PET薬剤を作るサイクロトロンを導入すべきか、デリバリーといってPET薬剤メーカーに供給してもらう方式にするかを調査しました。スペースに関しては、今後3〜4年の間に病院新施設の建設計画があり、実施されるとその地下にRI施設が移ります。そこでまずPET導入の第一段階として、現在のRIと付属した施設に最新のPET/CT検査装置を1台入れて、サイクロトロンを入れずにデリバリーで診療を開始しようということになったわけです。」

 現在、開設後4ヵ月余りだが、ひと月当たりのPET検査受診者数は80〜90名。がんの精密検査目的の保険診療と、がんのスクリーニング目的のがん検診(自由診療)との比率は93%対7%。圧倒的に保険診療の割合が高い。精密検査で診断するがんの種類は、肺がん25%、悪性リンパ腫25%、乳がん15%、頭頸部がん10数%他。悪性リンパ腫が他の施設に比べてかなり多いのは、骨髄移植の指定病院であること、血液内科など血液専門の科に力を入れているからだという。さらにPET検査の用途としてはがんの再発診断が多い。検査に訪れる患者さんの主治医がPET検査の長所・短所を正しく理解して、検査をオーダーしてくれるように、院内の勉強会を数回実施している。「各科の医師の反応は様々です。しかし、自分の症例を実際に依頼してPET検査が役に立つと、確実に認識が変わります。例えばリンパ腫などで、CTだけでは診療できないもの。乳がんの転移範囲や術後のフォローアップ(再発・転移の診断)に非常に役立つなどの事例がありますね」と放射線科医長の石守崇好

がん診療の拠点病院として

 倉敷中央病院は、岡山県に4つある「地域がん診療拠点病院」の1つでもある。そのため、近隣の開業医など医師を対象に講演会を開催。PET検査の啓蒙活動を積極的に行っている。現在、倉敷市以外からのPET検査の紹介患者数は全体の10数%。それも大病院からの紹介がほとんど。一方CTやMRI検査のオーダーは開業医からの紹介が多いところから、将来的にはPET検査の紹介患者数増加が予想される。このように地域医療への貢献も視野に入れ、来春着工予定の新施設内には、PET/CTを数台増設する予定である。