■コラム&インタビュー 一覧|治療法
2007.07.02 日経ビジネス特別版「がんの診断と治療」より
 

 手術でがんを切除すると、術後の痛みや機能低下に悩まされる。がんを切らずに治したいというのは、誰しもの願いだろう。UASオンコロジーセンター長の植松稔氏は、1994年から防衛医科大学校病院で強いX線を絞って多方向から当てる放射線治療を行い、「切らずにがんを治したい」という患者の願いを実現してきた。これまでに肺がんを中心としたさまざまながんの治療に手術と同等かより優れた実績をあげ、現在、その治療法は我が国だけでなく、欧米にも普及している。

 2006年10月から植松氏は、鹿児島市のUASオンコロジーセンターに移り、痛みのない放射線治療を実践している。鹿児島市在住の患者は4割程度で、半数以上は全国から植松氏を頼って訪れる。 「放射線治療は患者さんにとって、手術よりずっと楽な治療法です。がんが、楽な治療法で治るということが分かれば、患者さんやご家族の気持ちも少しは楽になるでしょう」と語る。

4次元ピンポイント照射は呼吸の動きに合わせ

 通常の放射線治療は「2次元照射」(図1)といって、主に体の前後あるいは左右から放射線を当てる方法で行われている。この方法は、がんの周りの正常組織にも放射線が当たるので、「広く弱く」という照射しかできない。そのため、がんを消滅させるのに必要かつ十分な量の放射線を当てられず、治せないがんも多かった。 これに対し、放射線のビームを絞って、3次元空間のあらゆる方向から「狭く強く」当てるのが3次元ピンポイント照射だ(図2)。これにより周囲の正常組織に当たる放射線量を抑え、がんに対して大量の放射線を当てて治療することが可能になった。3次元ピンポイント照射は定位放射線照射とも呼ばれ、最初に実用化されたのはガンマナイフという脳腫瘍専用の放射線治療装置だ。

 脳腫瘍に3次元ピンポイント照射が有効なことが分かっても、これまでは肺がんや乳がんなどに応用することは難しかった。脳腫瘍の場合は頭部をしっかりと固定すれば、脳やそこにある腫瘍は動かない。だが、肺がんや乳がんでは呼吸によって胸が膨らんだり、しぼんだりするためX線の照射部位がずれてしまう。そこで、縦・横・高さに時間を考慮して、呼吸で動く腫瘍に合わせて照射位置を変えながら当てる、4次元ピンポイント照射が必要になる。これが可能になれば、治療成果がさらに向上することが見込まれる。

がんへの照射精度を高めた治療装置を開発

 ピンポイント照射でがんを治療するには、がんの位置を正確に調べて照射するが、患者が動くと、放射線が当たる位置から、がんがズレてしまう。患者をフレームなどに拘束すれば良いの