■コラム&インタビュー 一覧|治療法
2007.07.02 日経ビジネス特別版「がんの診断と治療」より
 

 2007年4月から堺温心会病院(堺市中区)の院長に、43歳の若さで就任した平井学氏の専門は血液内科。今でこそ、189床の病院の経営に多くの時間を割かれているが、前の勤務先である大阪市立総合医療センター(大阪市都島区)では、血液内科の副部長として、悪性リンパ腫などの患者を担当してきた。

「堺温心会病院に来てからも、PET検査の依頼を出しています。今は、患者の利便性を考えて、近所のPET検査施設にお願いしていますが、大阪市立総合医療センター時代は、大阪府済生会中津病院のPETセンターに依頼することが多かったです」
 その言葉通り、平井氏は、血液のがんとも呼ばれる悪性リンパ腫などの患者に、PET検査を行ってきた。特に、治療の最前線に立っていた時期は、外来、入院患者合わせて、月に5〜6件のPET検査の依頼を出していた。
 「体中にあって、相互につながっているリンパ節が侵される悪性リンパ腫の場合、体の中でどれくらい広がっているかを見極めることが、とても大事です。それには、全身をスクリーニングするPET検査がとても有効です。限定的なら、抗がん剤治療に加えて、その部分を切除したり、放射線で焼いたりする治療法を選択できるようになります」

PETがなければ確定できない

 もちろん、PET検査でがんの疑いのある部位が見つかったとしても、そこから細胞を採取して検査(生検、病理検査)した結果を見なければ、病名を確定できない。しかし、補助的な検査であるPET検査が主役を務めた事例もある。 「腫瘍の存在を示す腫瘍マーカーと呼ばれるたんぱく質が増えるなど、悪性リンパ腫の疑いが高い患者さんがいました。しかし、生検するにも、どこから細胞を取ればよいのか分からなかった。そこで、PET検査を行い、疑わしい場所を特定し、そこから採取した細胞で悪性リンパ腫と確定できました」 悪性リンパ腫は、リンパ節が大きく腫れた場合、CTなどの「形状」を診る画像診断装置で見つけることもできる。だが、悪性リンパ腫の中にはリンパ節が腫れないタイプもある。そんなときは「活性」を診るPET検査の方が、明らかに判別しやすい。

 「この活性を見分けるには、ソフト(診断医)が重要。私はハード(検査装置)以上に重視しています。大阪府済生会中津病院PETセンターというより、同センター長の岡村光英氏に依頼し続けた理由はここにあります。同じ検査結果の画像を診ても、どう判断するかは、診断医次第ですから。今は、堺市に移ったので、岡村氏にはお願いしにくくなり、近隣のPET検査施設の中から、信頼できる診断医を探しているところです。これは、PET検査を依頼する治療医の重要な責任です」

平井氏は、自分でもPET検査の画像を診ながら、疑問点があれば診断医に問い合わせているという。その対応も診断医選びの重要なポイントだそうだ。「その分、こちらも事前に多くの情報を送っておきます。白血球を増やす薬を投与していれば、PET検査で陽性が出やすくなりますから。反対に、確定診断後に、それを診断医に伝えることも大事です。こういったやり取りで、診断医と治療医双方のスキルが上がっていくはずですから」。
医師同士の連携から始まる病院同士の連携(病病連携)の形がここにあった。