■コラム&インタビュー 一覧|治療法
2007.07.02 日経ビジネス特別版「がんの診断と治療」より
 

 北野病院は、1925年に京都大学医学部内に設立された「財団法人 田附興風会医学研究所」を母体とし、臨床医学研究用病院として市中に開設されてから80年近い歴史を持つ。現在は大阪市北部の地域中核病院となり、京都大学医学部との共同研究や人的交流も盛ん。現場の医師にも年間のテーマ研究を義務づけるなど、医学研究所の機能を持つ総合病院としてユニークな発展を続けている。

年間に800件を超すPET検査を依頼

北野病院が、近隣にある東天満クリニックにPET検査の依頼を始めたのは2004年11月から。その後の依頼実績は05年に430件、06年831件、07年395件(5月29日まで)と順調に伸び続けている。 「PETは、もうなくてはならない検査になりましたね」と話すのは、呼吸器内科副部長の鍵岡均氏である。 「CTやMRIは、電車の中の会話にも出てくるくらいポピュラーになっています。PETも、最近は同じような存在になりつつある。患者さんのほうから、そろそろPETを撮ってくださいよと要望されるケースも出てきていますから」

 知名度が高まったことから、PET検査は、肺がんの検査を継続する際の説得材料にもなるという。肺の場合、患部から組織を取ってきて顕微鏡で検査する生検は、胃や大腸のように簡単ではない。気管支内視鏡の検査では、未梢病変を確認できないことがあり、CTで位置を確認しながら針を刺して組織を取るCTガイド下生検も、直接、患部を目で見て針を操作できるわけではないので、組織をピンポイントで取れないケースもある。そんなとき、PET検査で陽性が出れば、再度の生検を実施したり、手術に踏み切る説得材料になるのだ。

最近の症例で典型的だったのは、96歳の男性のケース。CTで肺に影が見つかったので、気管支内視鏡による生検を行ったが、診断がつかなかった。 「年齢も年齢なので、ご家族の意見も受け入れて、少し経過を見ようということになりかけたんですね。以前なら、そこで諦めて、せっかく発見した影を放置することになったかも知れません。しかし、もう一押しして、PET検査をすることにしました。PET検査で陽性が出たので、それを説得材料にして再度、生検を行い、ようやく診断がつきました」 Aさんは、年齢のために手術はできなかったものの、定位放射線治療が効いて、がんは消失したという。

効果判定も保険適用になってほしい

 鍵岡氏自身の経験では、念のためにと思って撮ったPET検査の画像で、辛うじて再発を発見したケースがあった。肺がんの手術後に患者が不調を訴え、CTでは再発は確認できなかった。ところが、PET画像にはごく小さな影が写り、調べたところやはり再発だったという。

 「放射線で、うまく治療できました。気管支の中でしたから、あそこで見落としていたら、症状が出る頃には相当に進行していたはず。幸運でしたね」
 この他、呼吸器内科および外科では、一般的な腫瘍の良性・悪性の鑑別、病期診断などに、PET検査を活用している。必要と判断すれば、患者の同意を得て、治療効果判定にもPET検査を使うことがあるという。
 「例えば影は残っていても、PETの集積が低い場合、中の腫瘍はもう死んでいるかもしれない。逆に、集積が高ければ腫瘍の残存を考慮し、抗がん剤の変更も考えられます。こうした場合にPET検査は有効と考えられるので、治療効果判定も保険適用になって欲しいですね」