■市民講座|レポート
 
 2008年3月29日に、第9回 いのちの科学フォーラム 市民公開講座「画像でヒトをみる」(主催:体質研究会、慢性疾患・リハビリテイション研究振興財団)が開催された。今回は、医療用画像診断装置である、PET、CT、MRIの概要や最新動向のほか、これらの画像診断装置を使った脳の働きを調べる研究について、それぞれのテーマのエキスパートが、一般の方々にも分かりやすい言葉で解説した。
 冒頭、主催者である体質研究会の理事長である鳥塚莞爾氏(京都大学名誉教授)が、各画像診断装置の進歩のめざましさとともに、各講師の紹介を行い、市民講座の口火を切った。


 最初の演題は、「がんと戦うための画像診断:PET検査の役割とは?」。PET検査結果の読影をテーマにした、医師向けのセミナーの講師も数多くつとめている中本裕士氏(京都大学医学部附属病院 放射線科)が、PET検査の原理から、なぜ「がんをみつけられるか?」を説明した。さらに、CTやMRI検査との違いを示して、PETとほかの検査を組み合わせることによって、一層がんなどの疾患の診断や治療効果の確認などに役立つと締めくくった。

 第2の演題は、「面検出器CTって何なの?:形と働きをみる新しいCT」。日本初の画期的発明の一つである、面検出器CTの開発の中心となった片田和広氏(藤田保健衛生大学 医学部放射線医学教室)が、従来のマルチスライスCTとヘリカルスキャン法に対して、放射線被曝量の軽減や、検査時間の短縮により血流量などの機能情報の取得が可能になった、面検出器CTを紹介した。面検出器CTは、データの取得領域が広いため、脳や心臓ならば一度に臓器全体をスキャンできる。CTで撮影可能にする造影剤を投入後、一定間隔でスキャンすれば、その造影剤の動きをとらえられるので、血流の様子も把握できる。形態情報の取得が主だった従来のCT検査に対して、別の検査と言えるほどの有用性を備えていることを披露した。

 第3の演題は、「MRIによる病気の診断:現在可能なこと及びこれからの可能性」。MRIの黎明期からかかわってきた杉村和朗氏(神戸大学大学院 医学系研究科内科系講座放射線医学分野)が、分かりにくいMRIの原理を音叉の共鳴に例えて説明した後、なじみ深い果物やうなぎをMRIで撮影した画像を使って、水や脂肪がどのように見えるかを具体的に示した。ひときわ会場の注目を集めたプレゼンテーションは、MRIが金属などの磁性体を引きつける様子を撮影した動画だ。スパナーやハサミなどが、MRIに向かって高速で飛んでいく様を見た受講者からは驚きの声が上がった。本題である医療現場での利用については、軟らかい器官の撮影が得意なMRIを使えば、血管を検査するカテーテルや、内視鏡で検査するには難しいすい臓の検査をMRIに置き換えることができ、患者は負担なく検査を受けられることを説明した。

 最後の演題は、「画像で脳の働きをみる」。臨床から研究に軸足を移して脳のシステムの解明に取り組む定藤規弘氏(自然科学研究機構生理学研究所 大脳皮質機能研究系心理生理学研究部門)が、目には見えない脳の働きを、画像診断装置を駆使して画像化し研究するプロセスを紹介した。専門的な研究手法の紹介だけに、気を抜くとおいていかれそうな講演内容だったが、多くの人が関心を寄せる脳の機能の話だけに、受講者は集中して聴き入っていた。

 閉会のあいさつで、再び壇上に立った鳥塚氏は、今回の公開講座の意義を確認するとともに、次回の公開講座のテーマ「睡眠の科学:快眠のよろこび」と、日程(2008年5月17日、午後1時〜午後5時)を案内して、公開講座は終了した。